猫沢エミさんのインスタグラム写真 - (猫沢エミInstagram)「《パリ・盗難日記 / 15日目》前編朝6時起床。10月のパリのこの時間は、まだ夜明け前だ。 32歳ではじめてフランス語学校に通っていたのもちょうどこの季節で、毎朝5時に起きて7時まで予習してから行っていたことを思い出す。目が覚めるといつも真っ暗で、寒く雨っぽい晩秋のパリにやり込められているかのような気分だった。その青い痛みが蘇る。朝のニュースを見ながら、ブリオシュ2枚とカフェクレーム、りんごジュースの朝ごはんをしっかり食べて、昨夜揃えた書類を確認してからスニーカーで家を出た。過去の経験から、今日のような〝突撃役所巡り〟をする場合、結果どこをどう歩かされるかわからないので、とにかく長時間列に並ぶこと、無駄に歩かされることを予想して、水ボトル携帯のスニーカー（トレッキングかよ！）で行くのがいい。その予想はしょっぱなから当たった。昨日までにゆみこと調べた、移民局のある警察署ープレフェクチュールで、ネットでの予約がいらない（いわゆる〝駆け込み寺〟）で、私が居住する区に該当するのは、メトロ５番線のサン・マルセルにあるという情報。「2023年8月情報だもんね。まさかいくらなんでも、ここから移転しているってこたあないよね？」と話していた住所だ。扉が開くのは8時35分とあったが、現地には7時55分についていた。寒い雨の朝だからか、並んでいる人はまだ誰もいない。しかし、確かに〝駆け込み寺〟の看板もついていて、すでに事務所には人影も見える。しばらくうろうろしていたら、中にいたムッシュのひとりが出てきて「そこのあなた！もう、ここには何もないよ。申請はすべてネット化して、シテ島の中央プレフェクチュールに統合されたんだ。門の前に看板があるでしょ？　そこに今後の連絡先が書いてあるから」と言った。よく見てみると、なんと〝2023年10月2日から、業務はシテに統合〟って……(꒪⌓꒪) 盗難のたった10日前から運悪く、駆け込み寺もなくなったと。私はムッシュに食い下がり、「そのしなくちゃいけないネットでの申請が、サイトのシステムエラーで2日も動かないんです！それに、そこの看板には「全部シテへ」って書いてあるけど、シテのプレフェクチュールは予約がないと中に入ることもできませんよね⁉️その予約ページも先の先までいっぱいで、他にどんな手段があるのか教えて欲しいんです！」するとそのムッシュは「うーん……ひとまずシテに行ってみるしかないんじゃない？」と言った。予約表なしのまるごしでシテのプレフェクチュールに行く人……それは、フランスに来たてすぎて何も知らない移民だけ。鼻から討ち死にしに行くのを承知で、敵の本陣にまるごしで挑む私は、いち足軽でしかなかった。そして、予想通り列に並ぶことも許されず、門前払いだった(꒪⌓꒪)。列から弾かれたのは、世界でもトップクラスと言われる信用度の高い日本のパスポートを持つ私と、アフリカから来たてのおじちゃんひとりだった。おじちゃんは言った。「だって俺、こっち来たばっかでなんもわかんねえし…….パソコンとか持ってねえし……..」だよね❗️わかる‼️私が今こんなんじゃなかったら、おじちゃんの申請手伝ってあげたいところだよ。しかし平等だなあ。私もおじちゃんも平等に弾かれるところがいいと思っている自分、そんな場合じゃないだろ。そもそもフランスの公的サイトのシステムエラーが多すぎるのが問題なのだ。不条理。不条理天国フランス。あいつもこいつもあのVISAをただ一つ狙っているんだよ♪ このクラスでいちばんの永住の隣をあーみんなライバルさあーみんないのちがけだよってそれ、学園天国。さて、どうするか。やりましょう！不毛なコミッサリア巡りを！と、非常にややこしいのだが、先に説明したプレフェクチュール（移民局のある警察署）もコミッサリア（いわゆる普通の警察署）はフランス語で訳すとどちらも「警察署」となる。以前はこの２つの業務が今ほど分けられていなかった印象なのだが、コロナ後は申請が完全にネット化されて、プレフェクチュール業務は2023年10月2日よりシテに統合。コミッサリアでは滞在許可証に関する具体的な手続きはできなくなった。これが今のところ私が集めた情報だ。でも、行けば何か情報が掴めるかもしれない。そんな気持ちで向かった13区のコミッサリアの住所には、警察車両の駐屯場しかなかった。デター(꒪⌓꒪) 建物入り口に可愛らしい若い女性の警察官がいたので尋ねてみると「新築してね、移転したのよ〜。この道をまーーーーーっすぐ歩いて行くと、右手に黄色い建物が見えるからすぐわかると思うわ」。フランス人の「まーーーーっすぐ歩いて行くと」は注意が必要だ。下手したら、まーーーーーーっすぐ地球を一周するんじゃないかと思うような距離も、そうして教えるからだ。持ってきたボトルの水をゴクリと一口飲んで、私はまっすぐ歩き始めた。　写真1枚目: シテのプレフェクチュールで弾かれて、なんとも言えない気持ちで眺めた今朝のセーヌ写真2、3: 閉鎖されていた駆け込み寺と「シテに統合」の告示パネル。 #猫パリ　#猫沢エミのインターナショナル五十路ライフシフト #猫沢エミリーパリへ行く #猫沢エミのパリ盗難日記」10月27日 7時58分