猫沢エミのインスタグラム(necozawaemi) - 11月11日 19時02分
すこしまえに、身体も心もひどく疲れてしまった時期があった。
人にも、仕事にも、持病にも、変わらない世界の状況にも。
その頃、書棚の整理をしていて見つけた吉本ばななさんの《白河夜船》を30年ぶりくらいに読んでみたら、すこぶる良かった。この本の出版は、1989年。私が19歳のときだ。
まだ人生のなんたるかを知らないのに、いっちょまえに杞憂しているアンニュイな心持ちで読んでいたあの頃とは違って、今はなにもかも一応わかった風でいて、結局はいつまでたっても人生の舵取りなどうまくできない普通のおとなとして読むばななさんの文体が、とても沁みた。
優しく、暗い夜の果てで渾々と湧く水を飲むかのように、あっという間に一冊再読了してしまった。
今読んで改めて思うことは、ばななさんが時代を恐ろしく先取りした文体を持っていたということ。語弊を恐れずにいうならば、ある意味とてもSNS的なのだ。
誰も弾かない。間口が広く、どんな人にも響く角度を持っている。だから、人気作家さんなんでしょ、と簡単に言うのはつまならい。それが、どれだけセンスのいることなのか、人間をよく知っての作業なのかを想像する。
今回、若い頃に読んだたくさんの本を見つけた。それをおとなになってまた読むのは面白い。まるで、若かりし頃の自分への弔いも兼ねているかのようで。
長く生きたからこそ空いた穴に、優しくうずくまる言葉たちの群れに。
#猫沢図書館
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2020/11/11