猫沢エミのインスタグラム(necozawaemi) - 5月12日 18時58分

母の日。

レッスンの後、伊勢丹の地下食品コーナーへ行って、青森のストレート果汁のりんごジュースを包んでもらい、病院の母へ贈った。彼女は今、りんごジュースくらいしか飲めないのだ。

先日、『ステーキが食べたいなぁ。こんな分厚いの。』と、指でシャトーブリアンくらいの幅を作った母。りんごジュースを抱えた私は、たくさんのご馳走が並ぶ地下の店々を眺めては、少し恨めしい気持ちになった。食べられるのなら、なんでも食べさせてあげたいのに、と。

りんごジュースをことのほか喜んだ母。『なんだか暗いことばっかり考えちゃうのよ。』そりゃそうだ。身体と心は連動してるものね。それで退院出来たら、どこに行こうだとか、何をしようだとか、希望のある話をたくさんしてきた。

電車に揺られて自分の住まいのある駅に着くと、駅前の惣菜屋は珍しくおかずが空っぽに近く、あゝ…神田明神のお祭りだったわと思い出した。路地のあちこちに赤と白の提灯が豪勢に飾られて、私はなんだかそれに近づくことが、出来なかった。

買ったお惣菜は、すき焼きコロッケひとつと、カニクリームコロッケひとつ。母の食べられない胃袋を一時預かりしているかのように、哀しいほど腹が減る。一体どうしたことかと自分の腹に手をやりながら、私は江戸時代の人々が、三途の川と見立てた隅田川を渡った。

#東京下町時間

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