猫沢エミのインスタグラム(necozawaemi) - 1月1日 22時15分

晩ご飯は、お昼のあまりものと、くるみ餅でした。すったくるみに味噌とお砂糖、少しのお醤油にあご出汁を入れて、麦茶で割り伸ばしたたれに焼きたてのお餅を絡めた田舎料理。母がこのくるみだれを気に入って、作り方を聞いてきた。昼間に作ったヤンソンさんの誘惑もレシピが知りたいと言うので、内心しめしめ…とほくそ笑んだ。人は傷ついたり疲れたりしたとき、食べることから立て直すのが一番だから。
大家族から始まって、つぎつぎと人を見送り、ひとりぼっちになった母は、ごはんを食べなくなった。ひとりだからと、空腹をとりあえず満たすだけの適当なものを作り、器も選ばず寂しい食事をしばらく続けていたという。私は卒爾ながらも『一日一品常備菜を作ったら？そうすれば、3日目には三品になって、立派な食卓になるじゃない？それとひとりのときも、まるで他人に食べさせるように器を選んで綺麗な食卓にした方がいいよ。ひとりで作って寂しく食べるっていう発想じゃなく、もうひとりの自分に食べさせる気持ちでさ。』とアドヴァイスした。
かく言う私にも、お金が本当になくて食材は選べないわ、急に一人暮らしになって寂しいわで食事が荒れた時期があった。その頃の自分は明るい発想などできなかったし、何もかもが苦しくて、生きることに確たる希望も持てなかったのを覚えている。ある日、そんな負のスパイラルがほとほといやになって、お金がなくてもひとりでも食を楽しもうと心に決めて、日々のごはんを作り始めた。それが猫沢飯の原点です?かっこよくもなんともないんだけど、ずいぶんいろんなことが立て直った今でも、苦しい時代に見つけた工夫はとても役に立っていて、日々の力になってくれている。
ごはんとは偉大なものだ。作る喜び、それを食べた人たちが、みなとてもわかりやすく、素早く幸せになれる即効性も含めて、こんな素晴らしい良薬はないなと思う。
説教がましいことは言わずに、母の滞在中、私はもくもくとふだんのごはんを作り続け、母もそれをもくもくと食べている。『ちょっと太っちゃった』と笑う母の表情が、だいぶ明るくなってきたみたい。

#猫沢飯

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