猫沢エミのインスタグラム(necozawaemi) - 11月16日 18時16分
《星の王子さま》河野真里子 訳、新潮文庫 刊 読了。
遥か昔、まだ私が疲れたおとなになるまえに読んだ、星の王子さまを再読しようと思い立ったのは、先日の舞踏劇を観たから。あの動き、あの場面、あの衣装の表現したい細部を、もういちど言葉の側から確かめたかった。
なんて、高尚気取りで読み始めたら、プイっと鼻息で飛ばされてしまったよ。最初の一頁目で。
昔の私は何を読んでいたのか。それとも、ここに書いてある大切なことを順当に失って、着々とつまらないおとなになったからこそ、これらの言葉が疵口に滲みるのだろうか。かかりつけ病院の待合室で(読んでいて)うっかり涙して心配されるほど。
奇しくもサン=テグジュペリの遺作となってしまったこの物語は、世界で聖書の次に読まれている本と言われるだけあって、人が人として生きるために必要なもの、要らないものがはっきりと明記されている。
そして、今回読んでみて、ここまで死の匂いがする話だとは思ってもみなかった。(子ども時代の私には、さすがにメメント盛るちからが足りてなかったね)王子さまが地球から飛び立つ手法は、自殺にすら見える。でも、もしかしたら人が生きて、死の境目を飛び越えることは、本当はとても軽やかなものなのかもしれない。
その時がきて、抗えないのなら、逝く人も、見送る人も、それが事実ならばとても尊く、優しい。
テグジュペリの遺書。そして、彼がどう逝くのかまで事前に知らしめた、愛する者へのメッセージ。(彼が書いたときは、ごく個人的な愛する者への遺書だったろうけど、その後それは全人類へのメッセージとなった)。
彼の乗った飛行機が消息を経ち、マルセイユ沖の海底で発見されたのは1998年だった。彼と妻のコンシエロの名前が刻印されたブレスレットも見つかった。しかし、彼の遺体はいまだ見つかっていない。王子さまと同じように、あとかたもなく消えた。
以前、マルセイユの遊覧船に乗ったとき、船頭のムッシュが『ごらん!あれがL’île de Riou -リウ島だ。テグジュペリの飛行機は、あの島の左手に落ちたんだよ。』と、指差したその先のリウ島が、象を飲み込んだウワバミと酷似した形に見えたのは、私の心象風景だったのかしら…と思って、さっきフランスのGoogle mapで写真を見てみたら、やっぱりそうだった。
テグジュペリはこども時代に、自分の墓碑を描いたのだろうか…。いずれにせよ、沈みゆく飛行機のなかから彼の手をひっぱりあげたのは、星の王子さまだと私は信じている。今ではあの小さな星で、王子さまとテグジュペリがかわりばんこに薔薇の水遣りをしているのだと思う。きっと、王子さまはもう寂しくなんかない。
2枚目は10歳のアントワーヌ・サン=テグジュペリ
3枚目は彼の愛妻コンシエロ。完全にあの🌹の顔だ。
4枚目は発見されたブレスレット
そしてユピ坊は、あのキツネにしか見えない🦊
#猫沢図書館 #奇しくも今日はサン=テグジュペリに瓜二つの父の命日でした
[BIHAKUEN]UVシールド(UVShield)
>> 飲む日焼け止め!「UVシールド」を購入する
867
5
2020/11/16