猫沢エミのインスタグラム(necozawaemi) - 11月23日 16時23分


結局、無印良品のサロンに残ってコーヒーを飲みながら、クリストフ・バタイユ著 《アブサン・聖なる酒の幻》読了。

1994年に史上最年少でドゥ・マゴ賞を受賞したバタイユ(あのバタイユ…ジョルジュ・バタイユじゃないよ)の第二作目で、私はずいぶん昔にこの本を買って、仕舞い込んだままだった。先日の大掃除で見つけて、ようやく読むに至ったの。

ところでアブサンといえば、フランスでは1915年に全面禁止となるまで、かのボードレールやランボーなど詩人や作家をはじめ、多くの人々を魅了し、惑わした魔性の酒。原料のひとつであるニガヨモギに含まれる成分・ツジョンが幻覚などの向精神作用を引き起こすのだけど、神経系にダメージを残してしまう。

若い頃の私は、こうした薬学的な事象に興味を持って、だいぶこのあたりの本を読み漁っていた。

今から15年くらい前、パリからウィーン、プラハへ旅をしたのだけど、ウィーン〜プラハ行きの電車のなかで出逢ったオーストリアと日本人のハーフの男の子に『プラハじゃアブサンが再製造され始めたから、ぜひ飲んでみるといいよ。』と教えてもらった。

プラハへついた私は、早速街のクラシックな酒屋でアブサンの小瓶と大瓶、砂糖をのせるスプーンを買い込み、ブルタバ川にかかる美しいカレル橋のうえで、まるで酔っ払いのごとく小瓶をちびちび直飲みしながら歩いた。もちろん、再製造され始めたアブサンからはツジョンが取り除かれていて、合法の酒になっていたけれど、若い頃に読んだ魔性の酒の香りと味だけでも、私にとっては夢を叶えるに十分な代物だったのだ。(そのまま憧れだった、プラハ郊外の映画館 キノ・アエロまでトラムを乗り継いで訪ねていった。ヤン・シュワンクマイエルに傾倒していた時期だったから)。

バタイユは、あるひとりのアブサン醸造人の数奇な人生を軸に、19世紀末から20世紀初頭に行われたアブサンの製造方法と、フランス政府の対応を、まるでアブサンのコンパクトな歴史書のように綴りながらも、限りなく詩的、かつ簡潔な文体で、読む人をまほろばの世界へと誘ってくれる。

読んでいる間に見ていた景色が、ジャン・ジオノの《丘》と、ものすごく酷似している…と感じたのは、私の勝手な解釈なんだろうか。

人の手が及ばない、プロヴァンスの自然のエネルギー、丘という共通した舞台、そして主人公の名はジョゼ(本名はジャン)… 。

もう20年以上前に買った本が、その頃の空気をまるごと保存してくれていた感の、素晴らしい読書体験だった。本をあえて寝かす…って、もしかしたら文学を愉しむ、もうひとつの手法なんじゃ…とさえ思えるほど。

#猫沢図書館 #6Fのサロンは1000円以上のお買い物レシートか1Fのベーカリーでパンを買って持っていくと10%オフに #無印の回し者ではありません😁


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2020/11/23

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