AS IT IS Inc.のインスタグラム(asitis.ibaraki) - 6月29日 12時05分

琴線に触れるリノベーションの設計
アーティストの視点と「もののあはれ」

絵画を眺めるとき、絵筆が描いた微細なストロークや色彩の変化に心が震えます。

それはアーティストが見る世界の解像度が私たちの心に直接語りかけているからだと思うのです。

その解像度とは、世界を見る深遠さ、微細さのことで、その視点はアーティスト個々の感性や経験、鍛錬によって形成されます。

さて、その人々の琴線に触れる視点をリノベーションの設計に持ち込んだらどうなるでしょうか。
そして、もし多くの人が小学生の時に習った日本人の深い感性である「もののあはれ」がそれに絡んだらどうなるのかを考えてみました。

高解像度の設計アプローチでは、設計者は建物の詳細に心を寄せ、一つ一つの要素を細かく観察します。
その中で、「もののあはれ」を感じると、時間が作り出した建物の傷跡や風化にも、美しさを見つけられます。

それはまるで、日没時の紅く染まる空に心打たれるような、深い感動を与えてくれます。

一方、低解像度のアプローチでは、設計者は全体の構造や動きに目を向けます。
ここでも「もののあはれ」の感性が働き、建物全体が持つ流れや空間の使い方に対する感銘を深くします。

それは、雄大な山並みを見渡した時のような、壮大さと静寂が交錯する感動をもたらします。

アーティストが一枚のキャンバスに感情を描き出すように、設計者も全体のビジョンと細部のバランスを大切にしなければなりません。
そして、「もののあわれ」の感覚を味方につけることで、そのバランスをより深く、繊細に捉えることが可能になります。

「もののあはれ」を持つことで、時間とともに形成された既存の建物の風格や美しさを敬い、その感性を設計に生かすことができます。

それは、風に吹かれて揺れる古木の静かな佇まいや、壁に刻まれた時間の証のような、目に見えない価値を見つけ出す感動的な旅でもあります。

それらの要素は、リノベーション設計が一つの物語を紡ぐための重要な糸となります。
　

つまり、アーティストの視点と「もののあはれ」の感性を組み合わせることで、設計者は建物を新たな視点から見ることができ、その可能性を最大限に引き出すことができます。

高解像度と低解像度の視点を混ぜ合わせ、そこに「もののあはれ」の感覚を加えることで、設計者は新たな感動と魅力を生み出すことができるのではないかと。

琴線に触れるリノベーションは、既存の建物をどのように解析し、その情報をどのように提案に活かすかによって生まれます。

そのプロセスは、人の感情と深くつながった芸術作品を創り出す旅路と似ているのではないかと思います。

家づくりのプロセスはなかなか見えにくいですよね。
お客様の想い、家族の想い、設計者の想いが絡まりながら、出来上がっていくものだと思います。

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