猫沢エミのインスタグラム(necozawaemi) - 2月14日 19時09分

それは生活の匂い。

部屋のあちらこちらに点在し、たゆたう、人が暮らした体温と痕跡。

眺めが素晴らしく良い意外は、ごく平凡な3LDKの我が家。もう長いことパリへ戻ろうと考えていたから、大型の家具はほとんどが頂き物や拾い物だった。雑誌に登場する、他の文化人の方々のおしゃれなお部屋を拝見するたびに、なんだかとても気恥ずかしかった。

でも、それが私の家だった。

傷も汚れもあって、趣味に合わないものも飾ってあったりするふつうの家。

当時のパートナーとここを買い、別れ、4匹の猫と過ごし、2匹見送った。そして今日、ここを巣立つ。信じられない。本当に、こんな日が来るだなんて。

部屋のひとつひとつを巡り、壁にキスしてありがとうと深く頭を垂れた。

苦しかった時、あなたは私にとってたったひとつの砦でした。あなたがよく守ってくれたから、私は頑張れて無事にここまでこれたのだと思う。

16年の間に、あなたが担った最後の役所は猫楽園と天国タクシーステーション。本当に素晴らしかった。

昨夜から不思議と心は凪いで、今朝の鏡面のような川面みたいだ。

言葉にならないな。哀しいとか寂しいっていう絵の具一色じゃ表せない気持ち。

ありがとうございました。

玄関で深々と一礼し、振り返ることなく私は歩き始めた。

#東京下町時間 #猫沢エミのインターナショナル五十路ライフシフト

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