猫沢エミのインスタグラム(necozawaemi) - 2月9日 13時31分


日々いろいろありますが、本だけは手放せず。ひっそりと読了している昨今です。

2007年発売の《ぼくには数字が景色に見える》、前回の断捨離中に発見した、昔買ったけどまだ読んでいなかった本シリーズのひとつ。たぶん、みなさんのお宅にもそうゆう本があるのでは?

高機能アスペルガー、そしてサヴァン症候群のイギリス人、ダニエル・タメットが書いた、自身の幼少期から大人になるまでの半自叙伝。

この本によってもたらされた偉大な功績とは、通常、人との意思疎通が難しいアスペルガー症候群の人たちのなかで、彼のような意思の疎通ができる社会性を備えた人は稀で、かつ類稀な語学の才能を持っていたため、これまで解明されることが少なかったアスペルガー症候群の人たちの心の内や、世界をどんなふうに見ているのかを伝えてくれたこと。

ちなみにダニエルは11カ国を操り、世界で最も難しいと言われるアイスランド語を、ある企画番組のためにたった1週間で習得するなど、常人では考えられない脳力の持ち主だ。

言語を生業とする私にとっても「なるほど!」と膝を打つような、新しい言語世界の見方・感覚がたくさん盛り込まれていて、学術書としての価値も高いなぁと感じ入った。

なにより素晴らしかったのが、彼自身がアスペルガーの殻を破りながら、世界へ踏み出していく冒険活劇のような数々の思い出談。貧しい家の9人きょうだいの長男として生まれ、両親の苦悩、愛、努力についても、感謝の気持ちを込めながら綴っている。どんな能力も、他者と心を通わせる人間的な愛の経験なしでは威力を放てないのだと教えてくれる。

自身がゲイであることも、迷いながらもナチュラルにカミングアウトして、彼はパートナーと幸せに暮らしている。つい、病だとか症候群で人をカテゴリー分けする風潮の世界に向けて、彼がアスペルガーの立場から性マイノリティーの意識改革をもたらした、という点でも大きな功績をなし得ている。

ちなみに日本語訳タイトルを見ると、まるで数学に特化した物語のようだけど(実際、彼は円周率暗記の記録保持者でもあり、数学にも類稀な才能がある)どちらかと言えば、『共感覚』を駆使した言語世界の話の方が多め。数学も、言語も脳の稼働領域としては、共通した側面を持っているものね。

人間が持つ脳の可能性、未知数、そして〝健常者〟というカテゴリー分けは、もはや何の意味も持たないなと考えさせられる一冊。

みんなどこかが人と違って、たぶんちょっとおかしい。そのデフォ(欠損)にこそ、新たな可能性と人類の多様性進化の鍵が秘められている。

#猫沢図書館


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2021/2/9

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