猫沢エミのインスタグラム(necozawaemi) - 7月18日 13時29分


今回のパリ行きの機内で、やっと是枝監督の『万引き家族』を観た。静かで深い慈しみに震えた。

この物語は、実際にあった某事件を元に、是枝監督が長い時間をかけて脚本化したものだが、世界から一般的に見られている日本の《一億総中流》とは真逆の、社会の底辺で生きる、ある疑似家族の有り様が、あくまでも静かに丁寧に描かれている。

そもそも家族とは、なんの血の繋がりもない他人同士が、愛というひどく不確定なものを介在して始まる出発点を持つ集団を言う。愛が出発点だったにも関わらず、現実にはDVやモラルハラスメント、児童虐待、家庭内暴力など、家族がその後、内に抱え込む病の多さには、日々のニュースでも事欠かない。

柴田家の人々には血の繋がりが一切なく、代わりにあるものは、むき出しの労りや、瞬間の博愛精神や、人として当たり前の優しさだ。

その《人として当たり前》の価値観が、今の日本社会においてどれだけ軽んじられてるかというのを、まざまざと突きつけられる。

デタラメで犯罪者の集団で、社会の鼻摘まみ者の集まりでしかないはずの柴田家の人々の日常に、ある種の深い安らぎを覚えるのは、なにかがどこか狂っていると、この能面のような体裁がまかり通る今の日本の薄気味悪さから、一瞬解き放たれるからなんだろう。

ちなみにパルムドールを受賞した際、日本の首相が一切公的な祝辞を述べなかったことを、フランスの新聞などで取り上げられていた。ズバリ、精神的文化水準の低さについて。自国のトップが、失礼で恥ずかしいことをしていると、私も恥ずかしかった。彼が言わんとしたかったのは『日本にこんな事実はない』ということなんだろうか?まさに首相の態度こそ、膿んだまま放置されている現代日本社会の病原の象徴に見える。

後戻りできなくなる前に、もっとヒューマンで生きている感じがする日本の未来について、考えて欲しい。たぶん私たちはみな、虐待されているのを知りつつ、国という母親に放置されているネグレクト被害者なのかもしれない。

#猫沢映画館


[BIHAKUEN]UVシールド(UVShield)

>> 飲む日焼け止め!「UVシールド」を購入する

667

5

2019/7/18

猫沢エミを見た方におすすめの有名人