岩下尚史のインスタグラム(iwashita_hisafumi) - 11月17日 01時51分


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拙老に好い立場を下すつた、恩のある歳若の方々を新橋の旗亭に招きて、さゝやかな宴を差し上げぬ。
なかには久しぶりに會ふ方もありしが、すこし見ぬ間に愈々御活躍の由。
このやうに私を贔屓の方は皆々、必ず出世なさるはめでたし。それにひきかへ、さうでない奴輩は見るかげもなく零落せるは不思議なり。
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當夜の余興は、松山の女將と相談のうへ、小玉君の彈き唄ひによる『銀座懐古』の小唄振りを、かへす裳裾も艷なる秀千代君と、前割の初々しい小福君がをどり呉れければ、新數寄屋式の瀟洒な座敷に、煉瓦地時代の瓦斯灯のほのめくかと疑はれ、つい、うつとりとして寫眞撮るを忘れしは遺憾なり。
その代はりとして、大觀の軸を背にする三流の電波藝者の絵姿を撮りて、皆様の高覧に呈するものなり。
薄ぎたなき爺ィのモデルに不足ありと云へども、梅に鶯、竹に雀、新橋の御茶屋に大觀は出合ひものと知るべし。
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料亭松山は、明治期に三井財閥の寄合處でありし田中家と云ふ大茶屋の跡地に立ち、その初代女將は絶世の美女と謳はれ、西川鯉三郎時代の名取藝者末松(すゑまつ)にて、我も四十年前に御目に掛かりしときは、たしか五十の坂は越されしとおぼゆるに、五尺のあやめに水の掛かるやうな、凛として楚々たる風情は忘れ難く、清方や深水の彩管にても及ばぬ繪姿は、今も目にありありと浮かびぬ。あとにも先にも、あれほどの美人を見たことはなし。
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松山の普請に就きては、どこまでも淨らにして和らかな書院數寄屋にて、吉田五十八門下たる板垣元彬氏の手掛けられけり。
なにひとつ、厭なものがない、亦、取り澄ましてゐるやうで氣障ではない。
威張つてはゐないし、亦、うぢやぢやけてもゐない。
つまりは、東都一流新橋の格に叶ふたる、みごとな設計。
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2023/11/17

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