諸々儀式的なものが苦手だから、犬の火葬は移動式の車を手配した。 父と母の手際を見ながら、幼い頃信頼しきっていたものが本当は手探りなものであったことを感じ、なんだか少し不思議な気持ちになった。 夜寝られなかったから少し寝ようと思って父のベッドを借りて横になる。1時間ほどして起きてみると、父は犬小屋を始めとするしおんのものを処分していた。そのまま軽く朝ごはんを食べて、業者の到着を待った。 家に来たドライバー兼焼き手の男性はなんだか面白いくらいの好青年で、いい人にあたったなぁと思った。 保冷剤を入れたトランクに収まっている犬を運び、焼き場にふさわしい場所を探した。 最初は実家の近くにあるもう一つの実家(説明しづらい)の駐車場にしようかと思ったが、1時間近く焼き続けることを考え人の来なさそうな山道を選ぶ。 生きていた時の姿をしている身体に別れを告げて、焼き場に入っていくしおんを見送った。妹たちは泣いていた。 その場で待つか家に帰るか悩んだが、少しその場に居たくなり残ることにした。 残ってみたら残ってみたですることもなく散歩をしてみたら、やはりどうしたって夏だった。僕はしおんと何回夏を過ごしたんだっけなんてことを考えながらフラフラと歩く。 ビールが飲みたかったけれど、酒臭くなることに少し気が引けた。 焼きあがったしおんは見事に骨だけになった。 父はやはり骨を拾いたがらず、僕と母でほとんどの骨を拾う。 少しおどけて「骨、少し欲しいな」と言うと小さな骨を入れるペンダントを父が買ってくれた。 「妙なもん欲しがるんやな」と言っていたが、なんとなく欲しかったから仕方がない。 全ての骨を納めると、骨壷は当たり前みたいに小さかった。「家に来た時より小さくなったね」なんていう使い古されたことを口にしつつ、車に乗り込んだ。 明日は小手指でライブがあるので今日は長居できないと思い、妹たちより早く実家を出ることにした。実家に残してきたビールと、それを買った父のことを思いながら駅への道を歩く。どうしてもやはりビールが飲みたくなり、コンビニに寄った。 あまり寝ていないが高ぶっている身体にビールがとつとつと染み渡っていく。しおんはもう死んでこの世にはいないんだなぁという気持ちが他人事の様に滲み出して、泣いていた妹たちを思い出した。あんな風に泣いてあげられれば、しおんも少しは喜ぶのかしらと思いながら胸元にあるしおんの骨に「なんかごめん」とつぶやいてみた。 空はやっぱり夏の色で、僕は高円寺へ向かう電車に乗った。

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小林唯のインスタグラム(yui3651) - 7月14日 18時22分


諸々儀式的なものが苦手だから、犬の火葬は移動式の車を手配した。
父と母の手際を見ながら、幼い頃信頼しきっていたものが本当は手探りなものであったことを感じ、なんだか少し不思議な気持ちになった。
夜寝られなかったから少し寝ようと思って父のベッドを借りて横になる。1時間ほどして起きてみると、父は犬小屋を始めとするしおんのものを処分していた。そのまま軽く朝ごはんを食べて、業者の到着を待った。

家に来たドライバー兼焼き手の男性はなんだか面白いくらいの好青年で、いい人にあたったなぁと思った。
保冷剤を入れたトランクに収まっている犬を運び、焼き場にふさわしい場所を探した。
最初は実家の近くにあるもう一つの実家(説明しづらい)の駐車場にしようかと思ったが、1時間近く焼き続けることを考え人の来なさそうな山道を選ぶ。
生きていた時の姿をしている身体に別れを告げて、焼き場に入っていくしおんを見送った。妹たちは泣いていた。
その場で待つか家に帰るか悩んだが、少しその場に居たくなり残ることにした。
残ってみたら残ってみたですることもなく散歩をしてみたら、やはりどうしたって夏だった。僕はしおんと何回夏を過ごしたんだっけなんてことを考えながらフラフラと歩く。
ビールが飲みたかったけれど、酒臭くなることに少し気が引けた。
焼きあがったしおんは見事に骨だけになった。
父はやはり骨を拾いたがらず、僕と母でほとんどの骨を拾う。
少しおどけて「骨、少し欲しいな」と言うと小さな骨を入れるペンダントを父が買ってくれた。
「妙なもん欲しがるんやな」と言っていたが、なんとなく欲しかったから仕方がない。
全ての骨を納めると、骨壷は当たり前みたいに小さかった。「家に来た時より小さくなったね」なんていう使い古されたことを口にしつつ、車に乗り込んだ。

明日は小手指でライブがあるので今日は長居できないと思い、妹たちより早く実家を出ることにした。実家に残してきたビールと、それを買った父のことを思いながら駅への道を歩く。どうしてもやはりビールが飲みたくなり、コンビニに寄った。
あまり寝ていないが高ぶっている身体にビールがとつとつと染み渡っていく。しおんはもう死んでこの世にはいないんだなぁという気持ちが他人事の様に滲み出して、泣いていた妹たちを思い出した。あんな風に泣いてあげられれば、しおんも少しは喜ぶのかしらと思いながら胸元にあるしおんの骨に「なんかごめん」とつぶやいてみた。
空はやっぱり夏の色で、僕は高円寺へ向かう電車に乗った。


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2018/7/14

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