偕成社のインスタグラム(kaiseisha_pr) - 7月24日 12時01分

つま先立ちで窓からのぞくと、古びたバレエスタジオが目に入った。正面の壁全体に鏡がはられ、その前にバーがすえられている。黒のレオタードと、ピンクのソックス、それにサテンのバレエシューズを身につけた少女たちが、バーのわきに一列に並んでいた。

（中略）

「みんな、いい？　手とつま先と目で語るのよ！　でもドッティ、あなたの目は、おぎょうぎよくさせておきなさい！」

そのとき、ドッティとよばれた子が、ドアの方を見てアーヤに気がついた。けげんそうな表情が顔をよぎったが、目が合うとにこっとした。今にも声をあげてわらいだしそうだ。

曲の最後の音が小さくなって消えていき、バー・レッスンがおわった。少女たちは緊張をゆるめて、おしゃべりをしはじめた。そして、水のボトルに手をのばしたり、髪をととのえたり、ソックスをひっぱりあげたりしてから、スタジオのまんなかへ移動していった。

ドッティという子だけが、ずっとアーヤを見つめていた。水をゴクッと飲み、アーヤにウィンクして、ニッとわらいかけてくる。

アーヤもわらいかえした。ここ何か月かではじめて、だれかが自分をちゃんと見てくれた気がした。

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