平野紗季子のインスタグラム(sakikohirano) - 6月12日 23時46分
これはうまくまだ説明がつかないのだけれど、時折ローカルガストロノミーと言われるお店で「都市の料理だ」と思うことがある。それがなにをもってそうさせるのかはわからないけれど、ただ、そんな風に思うことがある。(大前提、私は都市で食べる都市の料理が大好きです)
「完璧な一皿ができたと思ってもその重要なパーツの食材が調達できる期間が一瞬で終わってしまう。調達できるとされる期間でさえ手に入らないこともある。そのハードルがこれまでとは比べものにならない」。上の話と関わるような関わらないような話ではあるが、これはとある地方の自然あふれる土地で開業したばかりのシェフがこぼしていた言葉だ。
一瞬の季節をパッと掴み取って皿の上に映す。なんでもないことのようにvilla aidaの小林シェフはやってのけるけれど、それが簡単ではないことを「土地に根差し土地を表現する」と謳うレストランを訪ねるほどに実感させられる。言葉は言葉にすぎなくて、その土地の食材を使えばその土地の料理になるというわけでもない。時間がかかるのだ。四季と歩みながら、ひとかたまりの時間を過ごしてこそ立ち現れるものが、どうやらあるようなのだ。
20年。いやもっと。それをやり続けてきたからこそ。小林さんのお料理には、たった今、が純粋に存在しているように思える。皿の上に畑仕事の中で導かれたような自然さがあって(もちろんそれを下支えするおいしさのルールもはっきり存在している)その佇まいがひたすらに心地よい。頭の中で煮詰めた料理に囚われていては、きっと旬に追い抜かれてしまうんだろう。
土地の季節を詠むように料理を仕上げる手は、だからこそどの土地に行ってもその土地の食材を尊重した料理を成立させるし、最高の食材が揃わなくたって形にするし、どの土地に行ってもやっぱり小林さんの料理になる。だから今や世界中で小林さんが料理をしていることにも納得がいく。
でもやっぱり和歌山でいただく小林さんの料理は特別だ。ハーブの香り、花の香り、今日のこの気温なら、この味付けじゃなくて、このソースが良いかもしれない。計画に執着せず、今日に呼応しながら料理を作る。行雲流水。とかって思う。
villa aidaの料理は、雲のように行き、水のように流れる。
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2023/6/12