松浦弥太郎のインスタグラム(yatarom) - 1月7日 13時50分
正月休みに「運純根 井上梅女 聞き書き」(扇谷正造編)を再読した。小料理屋「丸梅」の女主人、井上梅女さんの話しを僕にしてくれたのは犬養智子さんだった。犬養さんと娘さんの亜美さんは、僕が暮しの手帖で一番苦しんでいた時、もっとも親身に励ましてくれた恩人だ。僕は犬養さんが大好きだった。半蔵門「村上開進堂」の山本道子さんを引き合わせてくれたのも犬養さんだった。そんな犬養さんが書いた「常識以前の事」(昭和49年)という伝説の料理冊子がある。キッコーマンが作成したものなので非売品だ。なんと写真は石元泰博。当然ながら今では手に入らない。井上さんのことはホルトハウス房子さんが自著でも書いていて、丸梅を知らずして料理を語るなかれ、という神話まで存在する。ある日、ホルト先生に「井上さんってどんな方でしたか?」と聞いたら「きびしいけどやさしい方でした」と教えてくれた。とにかく、犬養さんが書いた「常識以前の事」が、料理の読み物として本当に素晴らしい。井上さんはこう語った。私にとっての料理の常識が、いまの人にとってはそうではないかもしれない。それを教えるのだから「常識以前の事」。その貴重な文章が「運純根 井上梅女 聞き書き」に収録されている。僕は犬養さんの話しに耳を傾けるように何度も読んだ。まごころの味がどんなふうに作られるのか。料理とはつまり物事の考え方。犬養さんはこう結んでいる。犬養さんは今でも僕の恩人であり続けている。
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2019/1/7