中井智彦のインスタグラム(nakaitomohiko) - 11月3日 10時55分


中原中也の作品の中で、最も印象的なものの1つが、「盲目の秋」です。これは、全4章に分かれている長い詩で、中也が運命の女性である長谷川泰子に振られた後に書いたものです。恋人が去り、一人残されてしまった孤独と、そのことによって湧き上がった芸術への情熱。章ごとにまったく異なる詩の様子から、次々と揺れ動く中也の感情を感じ取ることができます。
第1章では、自然の壮大さと、そこに立ち向かうことのできない自分の無力さが書かれています。壮大な自然の中に、曼珠沙華(ひがんばな)が一輪咲いている情景には、寂しさも感じられます。自然の強さに、芸術の姿を重ね合わせているのかもしれません。
第2章の、「これがどうなろうと、あれがどうなろうと、そんなことはどうでもいいのだ。」と、全てが平仮名で表された文章には、力強いエネルギーを感じます。そして、「人には自恃があればよい!」というところで漢字が出てきて、その後「自恃」という言葉が何度も繰り返されます。他人が何を言おうとどうでもいい、自分は、自分の思う芸術感を持っていればそれだけで良いのだ!と叫んでいる。長谷川泰子との別れが、中也の芸術感をここまで爆発させることになったのではないかなと思います。
第3章に出てくる「聖母(サンタ・マリア)」というのは、長谷川泰子のことでしょう。彼女のことを「聖母」と崇めながらも、「私はこんなにおまえを理解し、愛しているのに、おまえが私を愛してくれないから、私は血を吐いたんだ」と恨み言を吐かずにはいられない。それでも彼女は僕の中の聖母なのだと、自分に言い聞かせている中也の心情が見て取れます。
中也は「死」に関する詩を多く残していますが、この第4章でも、自分が死ぬ時のことを描写しています。前の章では彼女に恨み言を言っていた中也でしたが、死ぬ前には彼女がまた自分と重なり合ってくれるという情景を思い描いています。


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2020/11/3

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