林信行さんのインスタグラム写真 - (林信行Instagram)「本物のお堂からは五条ほど北。 京都市京セラ美術館の目測で十五間ほど(=約30m)の薄暗いギャラリーに並ぶ三十三間堂の観音の写真(撮影禁止)。 この空間をもっと早く桜が咲く時期に訪れたかった。  杉本博司展 「瑠璃の浄土」のことだ。 10日前、最終日直前に、ようやく訪れることができた。  同美術館のリニューアルオープンの記念展は、珍しいカラーの大型作品や映像作品、そして杉本さんが集めた「骨董品」などで杉本流に「浄土」を表現したもの。 展覧会中盤に置かれた護王神社の模型を見つけるや、もしやと反対側に回ると、案の定、通路の高さが壁に掛けられた「Seascape(海景)」の水平線の高さにピタリと合わされていて「やはり」と笑みが溢れた(そんな杉本さんだけに、もしかしたら三十三間堂が展示されたギャラリーも、洒落で33m幅にしているのではないかと思っている。調べたら33は観音に縁のある数字らしい)。  結局、3泊の京都滞在で3回もこの展覧会に足を運び、朝、夕、昼の展覧会風景を楽しんだ。 今回の展覧会の目玉は、プリズムで分光させれた光の色を捉えた写真。 私は杉本博司の展覧会に行くたびに販売される枚数限定のポスターを買い集めてきたが、今回はさすがに終了直前で売れ残っておらず、買い逃してしまった。  その代わり(2年前、ヴェルサイユでも見た)ガラスの茶室の東に仲秋の名月があがるまさにその瞬間を見れたのは良い思い出になった。  しかし、やはり残念なのは訪れるのが、こんなに遅くなってしまったこと。 本当はこの展覧会で、杉本の描く浄土や悠久に触れた後、二条橋の対岸、細見美術館に渡って「飄々表具─杉本博司の表具表現世界」で、数寄者としての彼の表具の作品を楽しむというコースを往復で楽しみたかった。  細見美術館は、桜の時期、内覧会で訪れた。西洋と東洋、古代と現代を縦横無尽に掛け合わせた表具には、杉本博司の数寄者としての魅力が溢れていた。  こちらの展覧会も、これから緊急事態宣言という直前での内覧会で、不用意に外出や京都訪問を促すのもふさわしくない気がして、結局、投稿するチャンスをずっと逃してしいた。  このやる瀬なさ、なんとも2020年らしい。  さて、その2020年は、私がテクノロジー系の執筆者として身を立ててからちょうど30年目の節目でもある。  最初はテクノロジーが人々に豊かさをもたらす、つまり浄土のような世界へと導いてくれると楽観的に信じて邁進してきた。 しかし、実際には穢土(えど=浄土の反対。煩悩に汚染されている衆生が住む地)を招いているのを日々、強く実感している。  幸運にも、私はこの三十年、テクノロジーを盲信し、ただ讃えてきたわけではないし、軸足もテクノロジーそのものよりも、それが人々の暮らしや社会にどのような影響を与えるかに置いてきた。 そのため、テクノロジーだけでなく、それが地域や産業にもたらす変化やアートなどへの影響も取材をつづけてきた。 しだいに、自分が興味があるのは、テクノロジーではなく、「理想の未来」だと気がついた頃からは、次第にデザインやアートの取材を増やしていった。できたばかりの森美術館で開催した杉本博司展「時間の終わり」で「Seascape」に込められた悠久へのまなざしにしびれて、最初の杉本展のポスターを買い、BRUTUSの特別号を買いため、「苔のむすまで」をはじめとする杉本博司の著書を買い集め、一気にアートへの傾倒が進んだのは今から15年前の2005年のこと(この展覧会には少なくとも十回は足を運んだ)。  それ以来、いろいろな美術展に足を運び、いろいろと新たなお気に入りのアーティストも生まれたが、今なお杉本博司氏は、私の中で別格のアーティストで、大きな影響を受け続けている。   「新しいものを生み出すこと」だけが未来づくりではなく、「未来に向けて何を遺すかを見極めること」も大事な未来づくりという最近の私の行動指針もあきらかに杉本氏の影響で芽生えてきたものだと思う。   その後は、東京はもちろん、New Yorkやヴェルサイユにも足を運んで杉本博司展を見てきたし、ちょうど森美術館の展覧会の頃から話を聞いていた「江之浦測候所」にも何度も足を運んだ。  今週はその江之浦測候所ができてちょうど3年目。杉本氏の新著「江之浦奇譚」も発刊された。  残念ながら、プリズム作品のポスターは入手し損ねたが、杉本作品との出会いをつくってれくた森美術館で買った「REVOLUTION」(と「POLAR BEAR」)のポスターは、今でも書斎のパソコンの真後ろに圧倒的な存在感で鎮座しており、闇雲ではない未来へのまなざしを思い出させるのに一躍買ってくれている。  #京都市京セラ美術館 #瑠璃の浄土 #杉本博司 #細見美術館  #飄々表具」10月11日 20時28分 - nobihaya

林信行のインスタグラム(nobihaya) - 10月11日 20時28分


本物のお堂からは五条ほど北。
京都市京セラ美術館の目測で十五間ほど(=約30m)の薄暗いギャラリーに並ぶ三十三間堂の観音の写真(撮影禁止)。
この空間をもっと早く桜が咲く時期に訪れたかった。

杉本博司展 「瑠璃の浄土」のことだ。
10日前、最終日直前に、ようやく訪れることができた。

同美術館のリニューアルオープンの記念展は、珍しいカラーの大型作品や映像作品、そして杉本さんが集めた「骨董品」などで杉本流に「浄土」を表現したもの。
展覧会中盤に置かれた護王神社の模型を見つけるや、もしやと反対側に回ると、案の定、通路の高さが壁に掛けられた「Seascape(海景)」の水平線の高さにピタリと合わされていて「やはり」と笑みが溢れた(そんな杉本さんだけに、もしかしたら三十三間堂が展示されたギャラリーも、洒落で33m幅にしているのではないかと思っている。調べたら33は観音に縁のある数字らしい)。

結局、3泊の京都滞在で3回もこの展覧会に足を運び、朝、夕、昼の展覧会風景を楽しんだ。
今回の展覧会の目玉は、プリズムで分光させれた光の色を捉えた写真。
私は杉本博司の展覧会に行くたびに販売される枚数限定のポスターを買い集めてきたが、今回はさすがに終了直前で売れ残っておらず、買い逃してしまった。

その代わり(2年前、ヴェルサイユでも見た)ガラスの茶室の東に仲秋の名月があがるまさにその瞬間を見れたのは良い思い出になった。

しかし、やはり残念なのは訪れるのが、こんなに遅くなってしまったこと。
本当はこの展覧会で、杉本の描く浄土や悠久に触れた後、二条橋の対岸、細見美術館に渡って「飄々表具─杉本博司の表具表現世界」で、数寄者としての彼の表具の作品を楽しむというコースを往復で楽しみたかった。

細見美術館は、桜の時期、内覧会で訪れた。西洋と東洋、古代と現代を縦横無尽に掛け合わせた表具には、杉本博司の数寄者としての魅力が溢れていた。

こちらの展覧会も、これから緊急事態宣言という直前での内覧会で、不用意に外出や京都訪問を促すのもふさわしくない気がして、結局、投稿するチャンスをずっと逃してしいた。

このやる瀬なさ、なんとも2020年らしい。

さて、その2020年は、私がテクノロジー系の執筆者として身を立ててからちょうど30年目の節目でもある。

最初はテクノロジーが人々に豊かさをもたらす、つまり浄土のような世界へと導いてくれると楽観的に信じて邁進してきた。
しかし、実際には穢土(えど=浄土の反対。煩悩に汚染されている衆生が住む地)を招いているのを日々、強く実感している。

幸運にも、私はこの三十年、テクノロジーを盲信し、ただ讃えてきたわけではないし、軸足もテクノロジーそのものよりも、それが人々の暮らしや社会にどのような影響を与えるかに置いてきた。
そのため、テクノロジーだけでなく、それが地域や産業にもたらす変化やアートなどへの影響も取材をつづけてきた。
しだいに、自分が興味があるのは、テクノロジーではなく、「理想の未来」だと気がついた頃からは、次第にデザインやアートの取材を増やしていった。できたばかりの森美術館で開催した杉本博司展「時間の終わり」で「Seascape」に込められた悠久へのまなざしにしびれて、最初の杉本展のポスターを買い、BRUTUSの特別号を買いため、「苔のむすまで」をはじめとする杉本博司の著書を買い集め、一気にアートへの傾倒が進んだのは今から15年前の2005年のこと(この展覧会には少なくとも十回は足を運んだ)。
 それ以来、いろいろな美術展に足を運び、いろいろと新たなお気に入りのアーティストも生まれたが、今なお杉本博司氏は、私の中で別格のアーティストで、大きな影響を受け続けている。

 「新しいものを生み出すこと」だけが未来づくりではなく、「未来に向けて何を遺すかを見極めること」も大事な未来づくりという最近の私の行動指針もあきらかに杉本氏の影響で芽生えてきたものだと思う。

 その後は、東京はもちろん、New Yorkやヴェルサイユにも足を運んで杉本博司展を見てきたし、ちょうど森美術館の展覧会の頃から話を聞いていた「江之浦測候所」にも何度も足を運んだ。
 今週はその江之浦測候所ができてちょうど3年目。杉本氏の新著「江之浦奇譚」も発刊された。

残念ながら、プリズム作品のポスターは入手し損ねたが、杉本作品との出会いをつくってれくた森美術館で買った「REVOLUTION」(と「POLAR BEAR」)のポスターは、今でも書斎のパソコンの真後ろに圧倒的な存在感で鎮座しており、闇雲ではない未来へのまなざしを思い出させるのに一躍買ってくれている。

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2020/10/11

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