佐藤佳菜子のインスタグラム(kanakosato1019) - 5月15日 17時22分
高速道路の料金所で支払いの順番待ちをしているとき、夫はわたしが渡したカードを窓の隙間、要するに窓をしまうポケットに落とした。シュタッと。とても静かにスムーズに。
それは数週間前にやっとの思いで手に入れた真新しい英国の銀行のキャッシュカード兼デビッドカードだった。
英国に引っ越してきたとき、銀行口座の開設はやるべきことリストの最上位だった。こちらの銀行は毎日5時ごろまで開いているし、土曜日も営業する。午後3時に閉まる日本の銀行よりぜんぜん親切だわ、なんて気軽な気持ちで訪ねて行った。
すると、まあまあの大きさの支店なのに、カウンターが1つに行員が1人。カウンターはもちろん大行列だった。
ゑ
ぼっち、、、?
世界のおひとり様は規模が違う。
UFJ銀行青山支店に行って
カウンターが1つだったら二度見する。
ピリピリする客を物ともせず、悠長に対応しているのをみてため息が出たが、ここは外国、仕方ない。大行列に並んでやっとカウンターに辿り着いて聞いた。
口座作れますか?
すると、予約はありますか?と。
予約?口座作るのって予約するんだっけ?日本の銀行口座って、普通に入っていって作りたいといったら作れた気がしたから考えもしなかったな、予約。
わかりました、じゃあ予約させてください、直近でいつが空いていますか。2週間後なら空いています。
ゑ?
2週間?
この国は明日やあさってに片付くことがものすごく少ない。wifi の付け替えも3週間後、冷蔵庫の修理も2週間後、窓が割れても何週間も人が来ない。
このとき、私はまだ英国の運転免許を持っていなかったので、なにか現住所を証明するものを持参しなければいけなかった。住所証明に人気なのは免許以外だと電気水道ガス料金の領収書。急いで会社に電話して、私の名前も領収書に加えてもらっていた。
2週間後、再び銀行に行くと個室に通された。担当してくれた男性行員は日本のアニメや漫画の大ファンで、わたしが働いていたところには漫画のワンピースがあったというと、とたんに目を輝かせ、働く手を完全に止めて数々の質問を投げかけてきた。日本の漫画について。
ごめん、わたしそんなに漫画のことはわからない、どちらかと言えばワンピースは読むよりも着せるタイプの人間だし、それに口座作りたい。手を動かして、お願い。わたしの口座を作ってーー!
答えた質問はほとんどドラゴンボールかナルトのことだったと思うが、数週間後、キャッシュカードが無事に届いた。
手間は大してかからなかったけど、ただただ時間がかかった。
そのカードを夫が窓の隙間に落とした。
はぁぁぁぁあああああぁぁぁ。
亞啞亞。
こんなに深いため息、今までにしたことあったかな。わたしは好物の鮨を口に入れてから深い呼吸をして匂いを楽しむ鮨呼吸には慣れがあるのだが、この時のため息は、深い鮨呼吸を超えていた。
幸運なことに、後日、夫は車を修理屋に出してカードを無事に取り出して帰ってきた。
人生は山あり谷あり。
次はなんですか?
#イミンの話
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2019/5/15