実話小説②「転機」 道長 弥生。同じクラスになったのは中学2年の時。道長は女子ソフトボール部で僕はラグビー部だった。部活の時に使用するグラウンドがとなりだったので中学1年の頃からなんとなくはお互いを知っているくらいの関係だった。容姿としては運動部だが、がっちりした体型などではなく、文化系の部活に所属してそうな素朴で清潔感があり、いい意味で田舎臭さが漂う。 そして僕はなんとなく、本当になんとなく、あいつちょっとは可愛いな、とは思っていた。 ただ意識するほどのものではなく、そんな女子は他にもいた。同じクラスになってからも特別仲が良い訳ではなく、そこそこ喋る女子。その1人だった。 しかし突然、転機は訪れるのだ。 中学2年の2学期。席替えで道長がとなりの席になった。そこそこ喋る女子がとなりになることでそこそこテンションがあがり、持ち前の調子ノリの性格がそこそこ炸裂し、僕はそこそこ道長を笑わせた。道長もノリ良く僕の40点くらいのボケに印象的なくっきりしたえくぼを作り、喜んでくれた。 そしてそんな毎日が当たり前となり、中学2年生の僕には道長を笑わせることが生きがいになっていた。 となりの席になった女子を意識する。そんな王道スタイル、太古の昔から伝えられてきたあのやり方で僕はあいつを好きになった。 道長 弥生を好きになった。 それはそれはもう。 それから2ヶ月ほどで席は代わってしまったのだが、クラスで僕がそこそこ喋る女子から、学校で僕が1番喋る好きな女子へと大きく成長を遂げるのであった。 話を戻そう。 周平は電話で淡々と道長に伝える。 「岡下おるやんか?岡下が道長さんのこと好きやねんって! え?そやで!いや、ほんま!ほんま!いや、どっきりとかちゃうから!」 自分で気持ちを伝えられなかった申し訳なさと情けなさで逆に何もなかったかのように窓の外を眺める僕。もちろん心臓はソーラン節の真っ最中。 「ほんまに岡下!道長さんのこと好きやねんで!信じてや!」 相変わらずイケイケの周平。この直後、彼はまた驚きの発言を言い放つ。 「岡下やろ?横におるで!うん!うん!わかった!電話代わるわ〜!」 と言い、無造作に子機を僕に渡す。急展開な状況に鼓動はピタッと止まり冷静になる。僕は子機をすんなり受け取る。 「もしもし?道長?あ、岡下やけど。」 僕の心臓は完全にソーラン節を踊るのをやめた。 「あー!岡下君!?今、川崎君から聞いたけど、その……ほんまなん?」 初めて聞く電話越しの道長の声はいつも通りの道長の声。いつも通りすぎていつも通りじゃないような違和感を覚える。 僕は緊張なんて0%ですよ。を装い 「そやねーん!ほんまやねーん!びっくりしたやろー?まー、そのー、あれやわー!あのー、俺ずっとお前の事好きやってーん!」 声のトーンが全く面白くない。テンションはこれでもかというくらいに空回りしている。 すると道長は全くいつもと違う僕が聞いたことのない細い声で 「うん。ありがとう…。でも、ごめん……。めっちゃ気持ちは嬉しいけど、岡下君は友達以上恋人未満っていうか…。」 「そうやんなー!そうやと思うわー!変なこと言うてごめんなー!まぁ、また明日学校でなー!」 とりあえず早く電話を切りたかった。なぜか怖いや恐ろしいに似た感情に襲われる。電話を持つ手の親指はずっと「切」のボタンに置かれている。 その瞬間、道長は、え?怒ってる?くらいの声のボリュームで 「岡下君!」 「ん?何?」 「あのな、あのな!お願いやから明日からも普通に学校で喋ろうな!気まずいかもやけど、お願いやで!」 「……大丈夫!大丈夫!まかせときー!ほんじゃ、また明日ねー!バイバーイ!」 電話を切る。 心臓がおへその辺りまでぐっと引っ張られてるような、痛みではない、少しこそばいような感覚が続き、その脱力感たるや半端ではなかった。 「あかんかったか…」 気まずそうに話かけてくる周平に僕は 「まぁな、こうなるって分かってたけど、告白して良かったわ!すっきりした!」 大嘘をつく。 「岡下よ!これからよ!これから振り向かせたらええねん!これで相手は意識するやろうし!スタート地点に立ったな!」 とかなんとか周平は一生懸命に僕を励ますが、脳みそが半分以上溶けたのかと思うくらい話は入ってこず、何を言っていたのかほとんど覚えていない。すまんな。周平。 ていうか、友達以上恋人未満ってなんやねん。そんなん実際に言う?マンガ、ドラマの見すぎやろ。 そんなぶつけようのない怒り、悲しさ、情けなさに眠れなかった夜。 次の日、寝不足で学校に行くとあいつは学校を休んでいた。なんでや。お前が気まずくなってもうてるやん。普通に喋ろ言うてたん。 道長…家で悩んでるやろな。 全部、全部僕のせいだ。人生で初めて自分で自分を嫌いになった。

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岡下雅典のインスタグラム(consuta_okasita) - 3月16日 18時49分


実話小説②「転機」

道長 弥生。同じクラスになったのは中学2年の時。道長は女子ソフトボール部で僕はラグビー部だった。部活の時に使用するグラウンドがとなりだったので中学1年の頃からなんとなくはお互いを知っているくらいの関係だった。容姿としては運動部だが、がっちりした体型などではなく、文化系の部活に所属してそうな素朴で清潔感があり、いい意味で田舎臭さが漂う。
そして僕はなんとなく、本当になんとなく、あいつちょっとは可愛いな、とは思っていた。
ただ意識するほどのものではなく、そんな女子は他にもいた。同じクラスになってからも特別仲が良い訳ではなく、そこそこ喋る女子。その1人だった。

しかし突然、転機は訪れるのだ。

中学2年の2学期。席替えで道長がとなりの席になった。そこそこ喋る女子がとなりになることでそこそこテンションがあがり、持ち前の調子ノリの性格がそこそこ炸裂し、僕はそこそこ道長を笑わせた。道長もノリ良く僕の40点くらいのボケに印象的なくっきりしたえくぼを作り、喜んでくれた。
そしてそんな毎日が当たり前となり、中学2年生の僕には道長を笑わせることが生きがいになっていた。
となりの席になった女子を意識する。そんな王道スタイル、太古の昔から伝えられてきたあのやり方で僕はあいつを好きになった。
道長 弥生を好きになった。
それはそれはもう。
それから2ヶ月ほどで席は代わってしまったのだが、クラスで僕がそこそこ喋る女子から、学校で僕が1番喋る好きな女子へと大きく成長を遂げるのであった。

話を戻そう。

周平は電話で淡々と道長に伝える。 「岡下おるやんか?岡下が道長さんのこと好きやねんって!
え?そやで!いや、ほんま!ほんま!いや、どっきりとかちゃうから!」 自分で気持ちを伝えられなかった申し訳なさと情けなさで逆に何もなかったかのように窓の外を眺める僕。もちろん心臓はソーラン節の真っ最中。 「ほんまに岡下!道長さんのこと好きやねんで!信じてや!」 相変わらずイケイケの周平。この直後、彼はまた驚きの発言を言い放つ。 「岡下やろ?横におるで!うん!うん!わかった!電話代わるわ〜!」 と言い、無造作に子機を僕に渡す。急展開な状況に鼓動はピタッと止まり冷静になる。僕は子機をすんなり受け取る。 「もしもし?道長?あ、岡下やけど。」 僕の心臓は完全にソーラン節を踊るのをやめた。 「あー!岡下君!?今、川崎君から聞いたけど、その……ほんまなん?」 初めて聞く電話越しの道長の声はいつも通りの道長の声。いつも通りすぎていつも通りじゃないような違和感を覚える。
僕は緊張なんて0%ですよ。を装い 「そやねーん!ほんまやねーん!びっくりしたやろー?まー、そのー、あれやわー!あのー、俺ずっとお前の事好きやってーん!」 声のトーンが全く面白くない。テンションはこれでもかというくらいに空回りしている。
すると道長は全くいつもと違う僕が聞いたことのない細い声で 「うん。ありがとう…。でも、ごめん……。めっちゃ気持ちは嬉しいけど、岡下君は友達以上恋人未満っていうか…。」 「そうやんなー!そうやと思うわー!変なこと言うてごめんなー!まぁ、また明日学校でなー!」 とりあえず早く電話を切りたかった。なぜか怖いや恐ろしいに似た感情に襲われる。電話を持つ手の親指はずっと「切」のボタンに置かれている。

その瞬間、道長は、え?怒ってる?くらいの声のボリュームで 「岡下君!」 「ん?何?」 「あのな、あのな!お願いやから明日からも普通に学校で喋ろうな!気まずいかもやけど、お願いやで!」 「……大丈夫!大丈夫!まかせときー!ほんじゃ、また明日ねー!バイバーイ!」 電話を切る。
心臓がおへその辺りまでぐっと引っ張られてるような、痛みではない、少しこそばいような感覚が続き、その脱力感たるや半端ではなかった。 「あかんかったか…」 気まずそうに話かけてくる周平に僕は 「まぁな、こうなるって分かってたけど、告白して良かったわ!すっきりした!」 大嘘をつく。 「岡下よ!これからよ!これから振り向かせたらええねん!これで相手は意識するやろうし!スタート地点に立ったな!」 とかなんとか周平は一生懸命に僕を励ますが、脳みそが半分以上溶けたのかと思うくらい話は入ってこず、何を言っていたのかほとんど覚えていない。すまんな。周平。

ていうか、友達以上恋人未満ってなんやねん。そんなん実際に言う?マンガ、ドラマの見すぎやろ。
そんなぶつけようのない怒り、悲しさ、情けなさに眠れなかった夜。
次の日、寝不足で学校に行くとあいつは学校を休んでいた。なんでや。お前が気まずくなってもうてるやん。普通に喋ろ言うてたん。

道長…家で悩んでるやろな。

全部、全部僕のせいだ。人生で初めて自分で自分を嫌いになった。


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2018/3/16

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