村上隆のインスタグラム(takashipom) - 2月12日 23時32分

２月１2日 月曜日
奈良美智さんの個展が先週の金曜日から始まりました。
展覧会開始前夜まで、紆余曲折いろいろあって、途中で展覧会そのものを中止か？という局面がありました。奈良さんの変化する気持ち。それは未知な私達への不安とともに、今まで体験してきた嫌な思い、そしてこのようにあるべきであると思う世界観とのギャップがあって、それを埋めるべく、アーティストとギャラリーとの間の深い対話が必至であると想い、たくさん話しあって（チャットで、ですが）僕らへの疑念、人間関係、等のあれこれに対して、少しづつお互いを理解し合っていって、そして、展覧会開催に漕ぎ着けました。

そもそも、芸術家は一般社会の中において、いい意味でも、悪い意味でも特異点です。その特異点故に、作品の鑑賞者が魂の開放を感じたり、作家の言動に、大きな感動を禁じ得なかったりするのですが、特異点である作家本人は、受け入れられたら嬉しいのは最初だけで、そこから「受け」の作家側の争点と鑑賞者側のそれとのギャップに絶望し、受け入れられなければそれにも絶望し、 と、まぁ、ただの我儘な人間の感情の振れ幅に見えはしますが、そういう絶望の淵に立たされるのです。だからそこからの救済として作品を造っていたりします。

先日のオープニングにおいて、奈良さんは結局会場に数分しか滞在しませんでした。
理由は、観客からの携帯写真の被写体になりたくないからでした。いたたまれずに会場から逃げ、待合室でうつむいでて「う〜ん。。。」と唸っていました。

アーティストは、いくら社会的に成功している、と見られたとしても、１人の弱い人間です。鑑賞者の皆さんが持ち合わせていても、アーティストには欠如、欠落した部分があって、それを補完するために作品制作をしていたりします。

人とは共有できない感情の所在地探しをしてこその、アーティストですからアンビバレントな立ち位置が仕事だろ！それぐらいの責任は果たせよ！と喝破されてしまうかもしれません。故に、現実逃避の行動に走ったり、責任感の強いアーティストには、自死する人間も少なからず居るのです。

東京での展覧会は久々なのと、写真撮影が可能なので、ソーシャルメディア効果なのか、２日間で、３０００人程の観客が来ました。こんなに来るのはうちのギャラリーでは珍しいことです。なので警備の人間を常時数名立てて、保全、安全、を心がけておりますが、観客の皆さんのモラルの協力もお願いしたいです。（混雑時には、い ろいろありました）

ちなみに、カイカイキキギャラリーは、日曜日、祝祭日はお休みを頂いております。
美術館のような公共性を前提にしていないスペースですので、どうかご理解の程をよろしくおねがいいたします。
@kaikaikikigallery
@奈良美智

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