山下航平のインスタグラム(kouhei_yamashita_official) - 7月22日 21時29分


『ロチュウ』
#フィクションエッセイ

暑い夏は人々の理性を開放的にする。
ジメジメとした東京の夏は私の地元のカラッと夏と違い、ナンパしてくる男のようにしつこく付きまとい不快感だけを与えてくる。

最後の電車が走り出そうという時間、キラキラとした街を歩いていると、お酒を飲んで、お酒に飲まれた男女が人の目も憚らず、
路上の端の方で今生の別れを惜しむようにキスをしている場面も今では当たり前のように目にするようになった。
田舎ではなかなかみない光景かもしれない。

路上キス。文字通り路上でキスをすることを指す言葉だ。
90年代のギャルたちは「ロチュウ」と言っていたらしい。今では「路チュウ」という言葉も市民権を得たように定着した。
「ロチュウ」と初めて聞いた時、人生の大半を車社会で生きた私は「路上駐車」の略語だと勘違いしていた。

「キス」と聞くと少し大人っぽいのに、「チュウ」という言葉は少し子供らしく、そして可愛く聞こえる。
カワイイ文化を体現していたギャルたちがこの言葉を使っていた理由もなんとなくわかるような気もする。

突き放すように言ってしまえば、
私は路上キスくらい「勝手にしてくれよ。」と思っている。

別に他人に迷惑をかけているわけでもない、犯罪を犯しているわけでもない(公然わいせつ罪には当たらないという見解)ので、
お互いが好きなようにやってくれて構わないと思っている。

ただ、一つ気に食わないところがある。
路上キスを見かけた時に、やはり私も人間なので、「お!」と思うし、
地元にはなかった珍しいものを見ている気分で、ついつい目がいってしまう部分はある。
むしろ、まったく気にならない人の方が珍しいのではないだろうか。

もちろん動物園に来たみたいにジロジロと見るわけではない。
チラッと通りすがりに横目で見るだけだ。

しかし、横目で見ながら通り過ぎようとするときに、路上キスをしている当事者たちと目が合ってしまうと、
横目でみていた私は、急に当事者たちに対して「なにか」申し訳ない気持ちになってしまう。
その「なにか」とは、見てはいけないものを見てしまった、二人の邪魔をしてしまった。そんなものだと思う。
すぐに目を逸らし、早足でそこを駆け抜けてしまうのだが、

なぜ!!!!こちらが悪びれないといけないのか!!!!!
悪びれないといけないのは絶対にそちらの方ではないのではないのか。
そこだけはどうも納得がいかないのだ。

*このお話はフィクションです。
実在の人物や団体などどは関係ありません。


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2023/7/22

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