PARCOのインスタグラム(parco_official) - 7月16日 18時09分
🏖🍉サマーギフト コラム🍉🏖
『サマーギフト』
小学三年生の夏休みに、女川という港町から富谷町(現在は富谷市)という 新興住宅地へと引っ越した。
富谷は今でこそ人口が増えてショッピングモールや 映画館もあるけれど、引っ越した当初はまだ空き地だらけのなんにもない場所だった。
そんななにもない退屈な場所で、友だちもいない僕の唯一の遊び相手は、祖父の家を訪れたときにみつけたブーメランだった。
外にでて、家の向かい側の空き地でひたすら空めがけてブーメランを投げる。
投げるのも僕、受けとるのも僕。
ブーメランの良いところは自己完結するところだ。
毎日、日が暮れるまで延々とブーメランを投げて過ごしていた。
ある日、いつものように外に出て力の限りブーメランを投げると、ブーメランは 僕の手元へもどらないまま、遠くの茂みへと消えていってしまった。
いくら探しても みつからなくて、僕は夏休みの唯一の遊び相手を失ってしまった。
しかし、その数日後、僕はあっさりブーメランと再会を果たす。
同い年くらいの少年が家の向かい側の空き地で僕のブーメランを使って遊んでいるところを 発見したのだ。
あわてて外へ出て彼に「それ俺のなんだけど」と伝えると、 彼は「あ、そうなんだ!じゃあさ、友だちになろう」といってきた。
それがしょーたくんとの出会いだった。
しょーたくんは僕と同い年で、人見知りの自分とは対象的にとにかくひと懐っこかった。
二人でブーメランを投げあってる最中、マシンガントークが止まらなかった。
僕は相槌を打ち続けながら、しょーたくんにブーメランを届けて、しょーたくんから ブーメランを受け取った。
僕はその繰り返しが、とてつもなく嬉しかった。
ずっとこうしたかったんだとおもう。
投げたブーメランを自分じゃない誰かに 受け取ってほしかったんだとおもう。
帰り際、しょーたくんにブーメランをプレゼントした。
友だちになにかをプレゼントするのは初めてだった。
コラム:三浦直之
ビジュアルデザイン:伊波英里
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2020/7/16