安藤裕子のインスタグラム(yuko_ando) - 12月18日 14時46分
なんだかちょっと 血の気が落ちちゃってるから
柘榴
昔 子供の頃住んでいたお家の二軒程先に、木苺や柘榴が庭先になるお宅があって、度々お邪魔しては頂いていたりした。
柘榴の実を指先で解くと爪が赤く染まり、 「マニキュアだ!」 なんてよく言っていた。
口に付けたら口紅で。
口から垂らせばオバケの血であった。
子供ながら美術の小道具のように楽しい果物だったのだ。
そのお家は坂道が交差する角にあって、下り坂と登り坂がぶつかる。
何かの境目を記すような場所だった。
ある夜、飼っていた三番目の猫が夢に現れて、わたしの前を歩いていく。
尻尾がひょろひょろと長いから「シッポ」という名前だった。
二女が学校帰りに拾ってきたこの猫は、いずれ野良の血がそうさせるのか、上二匹に酷くいじめられるようになっていた。
シッポは坂を下り、柘榴のお宅を右に曲がると急勾配の坂道を登っていく。
坂を登りきると振り向いて、 「にゃあ」
一言挨拶をした。
そして坂の向こうへ消えていった。
翌朝、彼は家から消えていた。
お別れの挨拶を残して、
彼は坂の向こうへ消えていった。
二度と彼は戻らなかった。
#柘榴のはなし #夢告げ
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2019/12/18