さだまさしのインスタグラム(sada_masashi) - 5月9日 10時33分
Mass@Mania✨📣
「ひとりごと」より全文掲載
「母の日のこと」
今日は母の日です。
今年もお母さん、遠いあなたに手紙を書きます。
昭和30年代、母の日の前日、学校で造花のカーネーションがひとり一輪ずつ配られました。家に持って帰ってお母さんに差し上げましょう、という配慮でしたが、お母さんの居る子は赤い色で、お母さんの居ない子は白い色でした。
子供心に「残酷なことをするなあ」と思いましたが、同時に「ああ、ぼくにはお母さんが居てくれて有り難いなあ」とも思いました。
大人になってアメリカで始まったアンナ・ジャービスにまつわる「母の日」の由来を知り、母を失った子に白い花を贈るということに、決して悪意など無かったのだと知りますが、やはりそれは子供の心を傷つけることになると気づいたのでしょうか、学校でのこの風習は昭和40年代には自然になくなりました。
「カーネーション」という花はまことに華やかで柔らかくて美しくて、僕は今でもとても好きです。
さて、お母さんの存在は誰にとっても大切なもので、勿論お母さんにとっても子供は宝物だと信じています。
しかし、世の中は豊かになったはずなのに、人々の心はどんどん貧しくなって行くようで、今は親に暴力を振るわれる子供達が増えました。
中には子供を死なせてしまう親さえあります。
親が子供を殴ったり、ご飯を食べさせない、いわゆる「虐待」をする時代になってしまいました。
思わず怒りと悲しみで身体が震えるような虐待の報道を見たら、お母さん、あなたなら何と云うでしょうか。
愛されることを知らずに育ったかのような大人達が沢山居ます。自ら生み出した心の闇の淵で迷う親たちの心を救う方法はないものでしょうか?
ましてや犠牲になる子ども達を救う手立てはないものでしょうか?
こんな中、今はまだ新型コロナウィルスの嵐吹き止まず、大切なお母さんと会いたくても「会えない」家族が沢山居ます。世の中の豊かさを嗤うように病は人の心を遠ざけて行きます。それでも、決して負けない、と誰もが自分に言い聞かせながら頑張っているのです。
不思議な時代を僕は生きています。
子供の頃、父が不遇な時期には我が家はとても貧しくて、お母さん、あなたはいつもお金の心配ばかりしていましたね。(尤もそれは我が家ばかりでなく、あの頃はどの家もみんな生活が苦しかった、そんな時代でした)
子供心に早く大人になって頑張って働いて、お母さんがお金の心配をしなくてすむようになりたい、と思っていました。(映画で借金して、結局お金の心配をさせてしまいましたけれど)
少年時代、確かに貧しかったですが僕らはとても幸せでした。豊かな家だけが「幸せ」だ、などと考えもしないことでした。貧しくとも心はとても豊かで、幸せでした。
何故なら僕らはお母さん、あなたに愛されていたからです。全て、お母さんの「愛の力」でした。
お母さんの「愛」こそが全ての幸せの源。
それはどんな時代になっても変わらない幸せの正体です。
お母さん。
あの貧しい時代に、何故僕にヴァイオリンを続けさせてくれたのですか?
それほど僕の音楽に期待してくれていたのですか?
お陰で弟や妹には随分我慢して貰いました。
ですが、あの頃与えて頂いた音楽のお陰で、僕は今でもこうして音楽の中で生きられるのです。
感謝の言葉が見つからないほど強く感謝をしています。
母の愛の深さは、幾つになっても到底量ることは出来ません。
「母の日」が、世の中のさまよえる沢山の「母親」の心を豊かに、幸せにしてくれますよう祈るばかりです。
そして早くウィルスとの戦いが収束しますように。
おかあさん、生んでくれてありがとうございます。
2021年5月9日
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