野田洋次郎のインスタグラム(yoji_noda) - 3月12日 21時27分


今日で、東日本大震災から丸10年が経ちました。
 今年も曲を作りました。『あいたい』という楽曲です。あの震災のことを想い、離れ離れになったいくつもの気持ちを思い描きながら出てきた言葉は、期せずしてこのコロナ禍を生きる僕たちにも通じる想いとなりました。

 被災した方、大事な人を亡くされた方、生活が一変した方々にとって10年というのはただの記号にすぎないと思います。直接被災することのなかった僕ら自身、あの震災とどう向き合ったらいいのだろうかという葛藤の10年でもありました。その中で唯一できることである音楽を毎年、勝手ながら発信させてもらってきました。
「この10年間どんな想いで毎年楽曲を発表され続けてきたのですか」
一つの節目を前にこのような質問をされることが増えてきました。そのたびになぜだろうと自問しますが、一向にわかりません。あの大きすぎる経験を忘れたくないから、風化させたくないから、被災した方々に少しでも寄り添っていたいから、いつかまたやってくる大震災に少しでも備えるきっかけとなってほしいから、ただ自分で自分を満足させたいから。どれも正解なようで、どれも的外れな気がしてきます。
 人が誰かを好きになるのに理由はありません。後からいくらでもそれらしい言葉は並べられるけど、それらはあくまで後付けのもののような気がします。理由や理屈から離れたところで人の根っこというのは動くのだと思います。
 この10年間の楽曲というのは僕にとってラブレターのようなものだったのかもしれません。返事のこない、一方的に書いたラブレター。毎年3.11が近づくと僕はなぜだか無意識にギターやピアノに向かい、あの日を、被災した人々や土地を想い、歌詞を書き、メンバーやスタッフや島田さんに声をかけ、楽曲にしてきました。ある時は悲しみ、ある時は慈しみ、ある時は苛立ちや絶望に感情が振られたこともありました。でも良いも悪いも、人間はずっと同じ感情ではいられません。その仕組みを最大限生かして、未来になんとか希望を繋げて生きていきたいと強く願っています。
 この新型コロナウィルス、COVID-19をくぐり抜けた先にはどんな未来が待っているのでしょう。大震災と同様に、大きな困難は時に人々の間に軋轢や摩擦、歪みを生み出します。時に分断や対立が生まれ、僕たち人間の本性があぶり出されることがあります。世界全体が、少しずつギシギシと音を立てて傾いていくように感じてなりません。こういう時だからこそ、手を取り合って生きていきたいです。

 今回、毎年3月11日に発表してきた楽曲に「あいたい」「かくれんぼ」の2曲を加えた10曲を一つのアルバムにまとめました。この楽曲たちを聞き返しながら改めてこの10年という歳月を振り返る作業にもなりました。僕はあの日から今日まで、ちゃんと生きてこられたのだろうか。僕自身が今日まで生き続けるに値することを、どれだけできただろうか。答えのない自問自答を繰り返します。きっとこれからも、答えのない「途中」を、もがきながらその時々の答えを出しながら生きていくんだと思います。
 これを聴いてくださる人たちにとってもこれまでの歳月を振り返り、そして未来を考え、ほんの少しでも希望を抱けるきっかけとなるアルバムだったら幸いです。

 最後に、東日本大震災で亡くなられたすべての命に、被災したすべての方々に、合掌。

洋次郎

 ※なお、このアルバムの利益は日本赤十字社、自治体などに全額寄付され、日本全国で起こる自然災害などの支援活動に充てられます。(2021年12月31日までの売上金額が寄付の対象となります)


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2021/3/12

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