林信行のインスタグラム(nobihaya) - 9月5日 17時46分


日本で唯一の泊まれる重要文化財、東京ステーションホテルで朝食を!
全長335m、東京タワーを横に倒したよりも2m長い東京ステーションホテル。そのほぼ中央、最上階にある朝食会場はTHE ATRIUMと名付けられている。家の中心にある広間の意味だが、一説ではギリシア語の「晴れた、明るい」の意味の語とも言われており、その通り最大天井高9mの天窓から自然光が降り注ぐ、なんとも気持ちの良い空間となっている。
第二次世界大戦の戦火からも復活したこの空間、今では旅行業に大きな痛手を与えたコロナ禍にもっともうまく立ち向かっている朝食会場として同業他社の視察も多いという。
「いったい、何が?」と不思議に思っていたが、着席してすぐにわかった。テーブルに置かれたビニール個別包装の紙の包み、開くと中から個別包装のカトラリーが出てきた。従業員がアイディアを出し合ってつくったという、この完全使い捨てのカトラリーには箸立てやマスク入れの役目も果たす工夫が凝らされている(これだけで商品化できそうだ)。
 7月1日から再開したという朝食は、COVID-19で一気に印象が悪くなったビュッフェ形式だが、ここにも信じられないほどの工夫が凝らされていて、他社が視察に来る理由がわかった。
 現在、ホテルの朝食ビュッフェにはいくつかの方式がある。従来通りのビュッフェでこまめにトングなどの共有物を取り替えたり消毒したりする方式、個々の料理の前に従業員が立っていて従業員が取り分けてくれる方式、頼むと持ってきてくれる方式(だったかな?)。
 だが、Small Luxury Hotels of the Worldの日本第1号の東京ステーションホテルでは、luxeとは何かをしっかりと教えてくれた。小皿料理はもちろんだが、パン、スープ、サラダ、ドレッシングといったものまで、袋詰めやあらかじめ蓋付きの小さな器に盛り付けられており、トングを使わずにとることができるのだ。一体、毎朝準備にどれだけの時間と手間を要しているのか想像がつかない。
 テーブルに戻って食べ始めると、器の蓋が大量に溢れるという新しい問題があるが、もちろん、そこにも気遣いがあり「蓋入れ」なる袋が用意されており、頻繁に回収にきてくれる。
 さらにシェフが目の前で料理するライブステーションを1カ所から4カ所に増やし、名物のパンの代わりにアボガドを使った低糖質のエッグベネディクトやオムレツ、ステーキ、和食、スイーツや自慢のスムージーを含むドリンクを用意。さらに希望の人には独自に配合したお米の香り高い土鍋ご飯をテーブルにてサーブ。
 この世界に類を見ない斬新な朝食ビュッフェスタイルは同ホテルが衛生管理の世界的リーディングカンパニーである「ECOLAB」と連携して開発したようだ。
 味も「SLH Awards 2018」にて"最優秀グルメホテル賞"を受賞、トリップアドバイザーの2020年の朝食の美味しいホテルランキングでも東京で唯一選ばれたホテルだけに美味しいことは間違いないが、このニューノーマルの時代、「食事」では味と同じくらい「安心」が大事な要素になっているが、この新習慣の中での「安心」や「快適」、「心地よさ」というのはこうやって生み出すのだ、という姿勢を見せられたような気がした。
 もちろん、心地良さには「重要文化財」の称号を剥奪される危険をおかしながらも、閉業の際には元の状態に戻すという条件付きで光あふれる空間に改修していたり、戦火を生き延びた面影を残すレンガを残していたり、ホテル装飾を専門に手掛けるイギリスの名門会社が同じ白にもいくつかのグラデーションを用意しつくりあげたヨーロッパの伝統美を感じさせる空間であったり、特別な客人用に用意された隠れた個室からは皇居へとまっすぐに伸びた行幸通りを見下ろせる景色が開かれていたり、その脇の窓からまもなく登場する新1万円札にも採用された東京駅の屋根が臨めたり、しかも、こうした面白い1つ1つのストーリーを、どのホテルマンもが自分の言葉で伝えられる有能スタッフ揃いであったり…
 どこを切り取ってもステキな体験で、久しぶりにとても贅沢な朝の時間を過ごすことができた。ちなみに、このATRIUM、普段は宿泊客が朝食で利用するだけの空間だが、8月より平日限定で10名までのビジターも受け入れているという。
 もっとも、せっかくなら泊まりたいという人には1室2名5万円台からの「シンプルステイ」プランもある。Go to TRAVELから東京がはずれた今、ホテルの宿泊客数は多少戻したとはいえ例年の3分の1程度。海外の客はもちろん、他の地方からの客も少なく、宿泊客のほとんどは東京の人だという。確かに、こんな時期だからこそ東京人の特権で、客の少ない誇れるホテルを満喫するというのもありかも知れない。駅舎ドームの美しいレリーフを臨む「ドームサイド」や丸の内側に臨む「パレスサイド」、松本清張の「点と線」の舞台になった部屋など多彩な部屋があるホテルだが、朝食セット付きの「シンプルステイ」プランは、1室2名50842円~(消費税、サービス料込、宿泊税別。9月30日までは宿泊税なし)で泊まれる。


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2020/9/5

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