鈴木ゆまのインスタグラム(yumayuma728) - 6月3日 19時43分

【官能レシピ〜陽子の場合】人はふと何かを詰めたくなる衝動に襲われる。

その日、私の場合はトマトとパプリカだった。

ありふれたスーパーの、蒸れたスーツの男達と何人かすれ違った後、

あの熟れた真っ赤なトマトを見たとき、陽子はふと、
. .「詰めたい」

と思った。

ピーマンやナスなど、ごくありふれた野菜に詰めるなんて、

陽子にとってうんざりしていた。

新しいものに詰めたい、新しい穴を見つけたい。

もちろん彼女は十分理解していた。

トマトに手を出すということは、あられもない身やドロっとした液が飛び散るということを。

けれど、陽子は怖くなかった。

どんなスプーンでその実をほじくり返すのか、

木製やプラスチックのナマやさしいものでなく、

ぐっと彼女の熱った体に冷たい金属製のスプーンが残酷にスルッと入っていくのを楽しんでいた。

見事に育ったきのこを素手でほぐし、

玉ねぎと肉を小慣れた手つきでこねてゆく。

陽子の目には涙が止まらない。

塩と胡椒でお互いの関係を整え、一度落ち着かせる。

けれど、息つく暇もなく、
あのポッカリと空を見上げて空いた秘孔に、

心の何かを埋めるのか如く、開いた穴を塞いでゆく。

薄いピンク色のヒダを傷つけないように、けれど極限まで薄く。

それが終わると、こんもりと隆起した山はチーズで覆いかぶされ、

煉獄の炎のような中に、投げ込まれた2つは我を忘れ、徐々に溶け合ってゆく。

けれど許された時間は15分。

キツネ色した汁を飛び散らしながら、火照った2人は湯気が止まらない。 . 「もう後戻りできないね。」 と薄ら笑いをしながら彼女は言う。 . ... そんな想像から覚めると、

彼女はいつの間にか、

スーパーで挽肉を手にしていた。

おわり

肉詰めトマトとパプリカ、美味しくできました💕

料理はノンフィクションですが、物語はフィクションかもしれません。

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