花柳凜さんのインスタグラム写真 - (花柳凜Instagram)「#Repost @mononoke_matsuri • • • • • • 「もののけ祭り」の演目として、一番最初に決まっていた日本舞踊家 花柳凜の「かぶき踊り」。戸隠と日本の未来のために、神を説得した。そんな舞台だった。この舞台を見た沢山の人が「日本人に生まれて良かった」と自分に伝えてくれた。  以下、「もののけ祭り」かわら版(ぶ号外) 令和元年 復活かぶき踊り から。  文  西端真矢  ーーーーーーーーーーーーーーーーーー  満開の桜の下で、女が踊り始めた。  切れ長の眼。真白い肌。ほっそりと伸びた首筋。  あの女、もしかして、通りがかりの誰かが言う。クニという娘じゃないか? 前に五条の河原で見たことがあるんだ。すごいぞ、この女は。他の女踊りなんか目じゃない。とんでもなく素敵におど、る、ん‥‥ そう言った唇が合わさる前に、もうその場の誰もが動けなくなっていた。  女の腕も、指も、腰も、若木の枝のようになめらかにしなる。  すべての男たちを誘っているようでいて、ゆっくりと手首を返すその指先が唇の前で止まり、阿弥陀様が微笑まれたようでもある。  一体この女は何者だろう?出雲から来たと名乗っているが‥  ああ、あたしが踊ると、男たちが、ぽかんと口を開けてあたしの体を見る。女たちはぎゅっとこぶしを握りしめて、まるで自分があたしになったように、紅色の、藤色の、浅葱色の小袖の下で魂を踊らせている。  今、この時、命の炎がぼうぼうと燃えさかる。  男たちが、女たちが、あたしを囲み鼓の音がタンタンタンと時を破るその破れた先にあたしが手をさしのべる時、天に向かって燃えさかる。  もしかしたら、男たちが合戦のさなか、うおおうおおと言葉にならない雄叫びを上げて敵陣に飛び込んでいく時もこんな風に胸が燃えさかるのだろうか?戦に破れてもはやこれまでと城に火を放ち、腹を切る時その腹の中もこうしてしびれるように燃えているのだろうか?  ああ、だけど、百年の間、戦に継ぐ戦に明け暮れたこの国も、今は東の徳川様と西の豊臣秀頼様、二人がにらめっこするだけでどうやら平らに治まりつつある。  それはそれでもったいなくありがたいことには違いないが、近頃じゃ、男たちは手持ち無沙汰で命を持て余し、馬鹿に傾かぶいた派手ななりをして、辻々でめったやたらとケンカを吹っかけている。  なんだ、あの傾かぶ奇者きものたちは、街中で威張って仕方のないヤツらだ。人々はそう陰口をたたくけど、本当は、どこかでヤツらの気持ちが分かるような気もしているんだ。だって、誰だって、たとえ明日の命は知れなくても、その奥の芯のところがぼうぼう燃える音を聞きたいじゃないか。  だから、あたしは踊る。あたしは彼らのために踊る。あたしたちはちと生まれて来るのが遅過ぎたけど、でも、あたしたちの命は確かにこの地面の上に生まれ落ちてから一刹那も休むことなくゆらめいているから。本当は真っ赤に燃え上がることだって出来るから。あたしの踊りでそう証を立ててみたいから。  この女。百年続いた戦国の世の幕切れに咲いた、金色の桜のような女の名を出雲の阿国という。  本当に出雲からやって来たのか、クニという名が真実の名なのか、誰も知らない。  わずかな記録から分かることは、戦国の世が終わり天下泰平江戸時代が幕を開ける、その直前に京に現れ、人々の心を激しくとらえたこと。全国津々浦々星の数ほどの追随者が生まれ、その踊りはやがてかぶき踊り、女かぶき、そして女歌舞伎と当て字されるようになったこと。  けれどその隆盛は二十年ほど。あまりにあやしく、美しく、風紀を乱すとして、幕府は女が舞台に立つことを禁じてしまう。かぶき踊りは歌舞伎という名の歌と踊りの劇に変り、男たちに担われるようになった。  阿国は消え、かぶき踊りは滅びた。けれどその命は今でも男たちが伝えて来た歌舞伎の踊り、“日本舞踊”と呼ばれる踊りの中に、出自を隠し生き続けている。いかにも男たちが生み、育てて来たかのように装われ、男の踊りが本流とさえされながら。このねじれた男装の娘を三百年後の今、女が女のまま踊ることで、再び産み直そうとする女がいる。  花柳凜。日本舞踊の家に生まれ、二歳から、踊り続けてきた。  頭のつむじの先から足先まで仕込まれている、手の、首の、腰の動き。どこの国の借物でもないその動きはこの島国の地面に根差し、三百年前、阿国という一人の女の体を借りて姿を現した。その動き。日本人の体の動きを、日本の踊りを、踊る。  阿国の生きた時代に比べて、今というこの時代は、命は燃えさかっているだろうか?いや、それどころかひどく濁りくすぶっているさと自嘲する人もいるだろう。それでも、そう笑う人々の肌の奥にも、命はいつもゆらめき、むずかる子どものように思いのまま燃えさかる時を待っている。その命のために踊る。  凜の言葉--- 「私は自分のためでなく、100年後のこの国のために踊ります」  八月三十一日、櫓の上で、かぶき踊りが復活する。  ーーーーーーーーーーーーーーーーーー  #もののけ祭り #かぶき踊り #祭りかぶく現代 #かぶきを始めたのは女性 #祭りかぶく現代 #長野 #戸隠 かわら版デザイン @seppuku_pistols 舞台大道具 絵師 @basara4d」9月12日 10時29分 - rinhanayagi

花柳凜のインスタグラム(rinhanayagi) - 9月12日 10時29分


#Repost @mononoke_matsuri
• • • • • •
「もののけ祭り」の演目として、一番最初に決まっていた日本舞踊家 花柳凜の「かぶき踊り」。戸隠と日本の未来のために、神を説得した。そんな舞台だった。この舞台を見た沢山の人が「日本人に生まれて良かった」と自分に伝えてくれた。

以下、「もののけ祭り」かわら版(ぶ号外)
令和元年 復活かぶき踊り から。

文 西端真矢

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

満開の桜の下で、女が踊り始めた。

切れ長の眼。真白い肌。ほっそりと伸びた首筋。

あの女、もしかして、通りがかりの誰かが言う。クニという娘じゃないか? 前に五条の河原で見たことがあるんだ。すごいぞ、この女は。他の女踊りなんか目じゃない。とんでもなく素敵におど、る、ん‥‥ そう言った唇が合わさる前に、もうその場の誰もが動けなくなっていた。

女の腕も、指も、腰も、若木の枝のようになめらかにしなる。

すべての男たちを誘っているようでいて、ゆっくりと手首を返すその指先が唇の前で止まり、阿弥陀様が微笑まれたようでもある。

一体この女は何者だろう?出雲から来たと名乗っているが‥
ああ、あたしが踊ると、男たちが、ぽかんと口を開けてあたしの体を見る。女たちはぎゅっとこぶしを握りしめて、まるで自分があたしになったように、紅色の、藤色の、浅葱色の小袖の下で魂を踊らせている。

今、この時、命の炎がぼうぼうと燃えさかる。

男たちが、女たちが、あたしを囲み鼓の音がタンタンタンと時を破るその破れた先にあたしが手をさしのべる時、天に向かって燃えさかる。

もしかしたら、男たちが合戦のさなか、うおおうおおと言葉にならない雄叫びを上げて敵陣に飛び込んでいく時もこんな風に胸が燃えさかるのだろうか?戦に破れてもはやこれまでと城に火を放ち、腹を切る時その腹の中もこうしてしびれるように燃えているのだろうか?

ああ、だけど、百年の間、戦に継ぐ戦に明け暮れたこの国も、今は東の徳川様と西の豊臣秀頼様、二人がにらめっこするだけでどうやら平らに治まりつつある。

それはそれでもったいなくありがたいことには違いないが、近頃じゃ、男たちは手持ち無沙汰で命を持て余し、馬鹿に傾かぶいた派手ななりをして、辻々でめったやたらとケンカを吹っかけている。

なんだ、あの傾かぶ奇者きものたちは、街中で威張って仕方のないヤツらだ。人々はそう陰口をたたくけど、本当は、どこかでヤツらの気持ちが分かるような気もしているんだ。だって、誰だって、たとえ明日の命は知れなくても、その奥の芯のところがぼうぼう燃える音を聞きたいじゃないか。

だから、あたしは踊る。あたしは彼らのために踊る。あたしたちはちと生まれて来るのが遅過ぎたけど、でも、あたしたちの命は確かにこの地面の上に生まれ落ちてから一刹那も休むことなくゆらめいているから。本当は真っ赤に燃え上がることだって出来るから。あたしの踊りでそう証を立ててみたいから。
この女。百年続いた戦国の世の幕切れに咲いた、金色の桜のような女の名を出雲の阿国という。

本当に出雲からやって来たのか、クニという名が真実の名なのか、誰も知らない。

わずかな記録から分かることは、戦国の世が終わり天下泰平江戸時代が幕を開ける、その直前に京に現れ、人々の心を激しくとらえたこと。全国津々浦々星の数ほどの追随者が生まれ、その踊りはやがてかぶき踊り、女かぶき、そして女歌舞伎と当て字されるようになったこと。

けれどその隆盛は二十年ほど。あまりにあやしく、美しく、風紀を乱すとして、幕府は女が舞台に立つことを禁じてしまう。かぶき踊りは歌舞伎という名の歌と踊りの劇に変り、男たちに担われるようになった。

阿国は消え、かぶき踊りは滅びた。けれどその命は今でも男たちが伝えて来た歌舞伎の踊り、“日本舞踊”と呼ばれる踊りの中に、出自を隠し生き続けている。いかにも男たちが生み、育てて来たかのように装われ、男の踊りが本流とさえされながら。このねじれた男装の娘を三百年後の今、女が女のまま踊ることで、再び産み直そうとする女がいる。
花柳凜。日本舞踊の家に生まれ、二歳から、踊り続けてきた。

頭のつむじの先から足先まで仕込まれている、手の、首の、腰の動き。どこの国の借物でもないその動きはこの島国の地面に根差し、三百年前、阿国という一人の女の体を借りて姿を現した。その動き。日本人の体の動きを、日本の踊りを、踊る。

阿国の生きた時代に比べて、今というこの時代は、命は燃えさかっているだろうか?いや、それどころかひどく濁りくすぶっているさと自嘲する人もいるだろう。それでも、そう笑う人々の肌の奥にも、命はいつもゆらめき、むずかる子どものように思いのまま燃えさかる時を待っている。その命のために踊る。

凜の言葉---
「私は自分のためでなく、100年後のこの国のために踊ります」

八月三十一日、櫓の上で、かぶき踊りが復活する。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

#もののけ祭り #かぶき踊り #祭りかぶく現代 #かぶきを始めたのは女性 #祭りかぶく現代 #長野 #戸隠
かわら版デザイン @seppuku_pistols
舞台大道具 絵師 @basara4d


[BIHAKUEN]UVシールド(UVShield) 更年期に悩んだら

>> 飲む日焼け止め!「UVシールド」を購入する

168

4

2019/9/12

花柳凜を見た方におすすめの有名人