村上隆のインスタグラム(takashipom) - 4月21日 09時34分


日本における芸術の受容のされ方、そして理解のされ方。それらの問題が噴出する場として、川越の「うつわノート」 @utsuwanote 小野哲平 @onoteppei の個展『小野哲平 衝動と暴力性』がとても良いモチーフであると思い、来週の月曜日に「うつわノート」のオーナー、松本武明さんと小野哲平さんとトークすることにしました。
僕は15年ほど前から生活工芸系の陶芸にはまりました。僕自身の表現を日本で発表することを諦め、全身全霊、日本国外での発表に切り替えようと決意を完全に固めた時期と同期しています。陶芸作家のライフスタイルは、質素で純粋でひたむきで壊れやすい。芸術家としてのセンチメンタリズムをすべて持ちわせているようで、ああ、日本 人にはこういう表現なら受容できるだろうし、僕自身も癒やされる、と思って、作品を購入し、ギャラリーや作家に近づき、少しづつ、その核心部に触れてゆきました。そうすると、ギャラリーは、明らかにセンチメンタリズムを商品としてプレゼンしているものの、作家達はそうしたファンタジックな物語と、現実の辛すぎる毎日とのギャップに押しつぶされそうになっていました。
ギャラリーは作品、作家をキュレーションするわけですから、若くて美しい人間で、作品がフレッシュで、そして安いものを探してきてこそ、ギャラ リーの真価を問える状態となります。なので、ギャラリーの正しい在り方は目新しさが大切な柱です。
しかし、作家たちは毎年年老いてゆき、家族に金のかかる状況も出てきたりして、デヴューしたてのフレッシュな状態とをキープできなくなります。そこで、少しづつ値上げもしてゆきますが、そうすると客がついてこない。
客はファンタジーを安価で消費したいだけなので、現実に目覚めた作家側の都合など理解したくもない。また、優秀である作家はその芸術の追求に目覚めるも、客がついてこず、そうすれば、命綱のギャラリーもおあいそ程度に2~3年は付き合うでしょうが、だんだ ん縁遠くなっていったり、もしくは作家の考える芸術性とは関係なく、若かりしころの作品のコピーを若かりし頃の価格で提供してほしい、と願ったりもするわけです。
もしくは、芸術の深遠なる部分に気がついた作家のそうしたエリアに気がついても、客に教育を即す訳にも行かず、デパートやより広い客に向けて 薄く拡散してゆく道のりを選んだりもしましょう。

そうした意味で、生活工芸系の陶芸は、作家が年を取り、客も飽き始めていて、10年前の景気の良いムードはなくなってきている。
それに対する処方箋は模索するとしたら、先に上げた量販店への出展や、もしくは素人でもわかるような公募展などでの賞の冠を掲げること、これ が今の悲しい現状かと思います。

芸術的なる高みに気がついた作家はどうしたらいいの か?もしくは、ギャラリーはどうすべきか?賢かったり行動力のある作家はいち早く海外への販路を広げ日本国内のシュリンクしたマーケットから距離を取る事で己のブランドをキープしている。小野さんは奥様の早川ユミさんとともに、他より一歩先んじて中国、台湾、アメリカと販路を少しずつ広げたりしています。
そんな大前提があって、一歩先んじようという野心からの抽象芸術へのトライアル、なのかもしれません。
ギャラリーも昨今、中国のギャラリーからの招待を受けたりもしているようです。
そんな背景をもつ意味で『小野哲平 衝動と暴力性』は企画開催されたと言うことは理解できます。
作品は写真でしかみていませんが、針金が絡まった、オブジェもどきの陶器。またタイトルにも素人にも伝わるようにと選ばれた言葉「衝動と暴力性」を掲げ、 言ってみれば芸術家の内なる葛藤に気がついた。時代の気分は平成デフレの中でのほっこりムードから移動して、表現者の生き方そのものを問いか ける
様になってきている。そんな変遷の最前線を応援してくれ、という流れでしょうが、さて、ココで大切なことは、おためごかしの2000年代から勃興した「生活工芸」 的陶芸業界ドグマを、今までと同一線上で商うこと、アピールする流れが、正しいのだろうか?ということです。
こういうトライを行う際には、若い、イケメン(美人)安い、を延々と期待する馬鹿な客を置き去りにしてもいいのではないか、ということなのです。
陶芸を愛する、と自称する客の金の使い方、審美眼、 芸術と人生との距離感、など、本当にあるレベルを超えているのか?という疑問と、超えていない現状を客観的に判断して、断罪する勇気が必要な のではないか、と思うのです。
同時に陶芸家に対してもキチンとした評価を下しても イイと思ってます。其れが厳しい批評であっても。ではその評価軸、設定されるレベルとはなにか。
それへの答えが、たまたま見た漫画原作のアニメにあ りました。「四月は君の嘘」と「ピアノの森」です。
ココで語られている音楽家の内面への肉薄は、どれだけ日本人がクラッシック音楽への教養と、そのエリアの芸術への理解が深いのかが理解できま す。
この漫画原作のアニメを観てください。
音楽を理解できておらずとも、音楽家の苦悩や限界突 破、表現とはなにか、という問いかけと解答をだしているのです。→つづく。


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2019/4/21

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