佐伯紅緒のインスタグラム(beniosaeki) - 11月16日 00時05分


ボジョレヌーボー。
一杯だけ飲んで帰ってきました。

小説を書き始めるとSNS更新がピタッと止まる。単調な生活になるので大して書くことがないからというのもあるけど、私の場合、更新頻度が高い時の方が意外とまいっていることが多い。
日々のいろいろを綴ることで、自分を鼓舞しているのだと思う。
それでは小説を書いているときはノリノリかというと、それも違う。
むしろ、書くことで自分の中から余計なものがゾロゾロ出てきてうわあああとなることのほうが多い。
朝7時に起き、午前中いっぱい粘っても1ページも書けない時もある。
うまく書けた、と思った文を翌日「ダメだこりゃ」と全部捨てちゃったり。そんなことはしょっちゅうだ。
それでもこつこつ書いていくと次第にページ数がたまっていき、ある日とうとう明烏が鳴く頃、句読点のあとに「終」と書く日がやってくる。

スランプで数年書けなくなって、ようやくまた書けるようになったことが嬉しくてたまらない。

書けなくなってしまった経緯は話すとすごく長くなるし、それはそれで一冊の本になってしまうのでいつか別の機会にまとめるけど、その間も短いものは書けたのでシナリオやらコラムやらゲームやらを書いていた。

正直、そっちのほうがお金にはなった。
その間、生来の「いちびり」が高じて舞台や映画にも出させてもらった。

そんな私を「そのままだと何屋さんだかわからなくなりますよ」と責めた編集者さんもいた。
正直、それを言われた時にはショックだったし、大手出版社に勤める彼女のほうが正しいのかも知れないと思った。

けれど、編集しか知らなかった彼女は結局その後心を壊し、閑職に追い込まれて会社を辞めることになった。
会社員時代にフリーで食っていくだけの人脈を作っておかなかったらしく、郷里の実家へ帰るというその彼女から「また戻ってきたら佐伯さんと仕事をさせてください」という虫の良いメールが来たときはさすがに目を疑った。
そしてああ、やはり心を壊さないために他のことをやっていたのは正解だったのだ、と思った。

何でも屋さんでもいいじゃないの。
初めてそう思えたのだ。

つまらないプライドで文学以外の仕事を自分に禁じ、才能あるのに沈んでいった作家さんを大勢知っている。
みんな、わたしがなかなかデビューできずに土の中で足掻いていた頃、空の上でキラ星のように燦然と光り輝いていた人たちだった。

仕事を選ばなかったわたしは賞には縁がなかったけれど、その代わりいろんなジャンルの仕事ができるようになった。筆力をつけるためにはエロもアクションも選り好みせずに書き、その結果、文章でどうにかして食べていくくらいの自信はついてきた。

だけど、やっぱりいろいろやってみてつくづく思い知ったことは、わたしはやっぱり小説を書いている時の自分が一番好きだということだ。

逍遥する、という古い言葉があるけれど、文章を蚕みたいに吐き出している時は文字通り心が「逍遥」している。
いただき仕事でなく、出版のあてもない、いつ誰が読んでくれるかもわからないお話を書いているときでも、それが自分の書きたいものであるときは旅をしているような気分になる。

売れっ子作家でもないくせになにを偉そうに、と言われればそれまでだけど、木っ端作家でもそう感じてしまうものは仕方ない。

頭の中にあるあれもこれも、取り出して目の前に並べたい。
色をつけて整えて、わたしが生涯追い続けてきたものはこれなんですよと示したい。
それが子供の頃からの想いです。
たぶん死ぬまで変わりません。

長くなってしまいました。きっとボジョレーヌーヴォーのせいです。

#小説 #脚本 #ボジョレーヌーヴォー


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2018/11/16

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