今半弁当、最高でした。冷たい、固い、まずいと勝手に決めつけていたお弁当の概念が覆され、お弁当の余韻に若干ぐったりしつつ、最後に口に運んだローストビーフのスジをくちゃくちゃ噛みながら、今このテキストを書いております。 お弁当のフタを開けまず1口目。1口目がいちばん迷いました。お弁当内のどこを見渡しても、手をつけるスキがないんです。「とりあえず」なんて生半可な気持ちで手を伸ばせる2軍のおかずがないんですよ。悩んだ挙句、お弁当箱の右端にこっそりとかくれていたキノコに手を伸ばしました。キノコなら、高級弁当初心者の私を受け入れてくれるんじゃないか。淡い期待がありました。とんでもない。キノコの旨味は私の脳天にズギュンと突き刺さり、口のなかでジュワっと弾けて消えました。一瞬なにが起きたのかわからず、しばらく呆然としましたが、だんだんと現実に引き戻されました。今半弁当処女の私は、しょっぱなのキノコからイってしまったんです。 このままでは、このお弁当を食べ終えるまで身がもたない。そう感じた私は、慣れ親しんでいるカレに助けを求めました。ライスです。小さい頃から苦楽を共にし、一緒に育ってきた幼馴染のライスくん。カレなら、私を優しく包み込んでくれるのではないか。冗談じゃありません。松茸のスライスと枝豆が乗っかったライスは、もう私の知っているライスくんではありませんでした。口に入れた瞬間、全身を松茸の香りが駆け巡り、一気に鼻の穴から出ていきました。私は鼻の穴まで犯されたのです。ここまできたら、もう失うものはありません。 3口目、ここからはもう迷いはありませんでした。月曜断食で今日1日何も食べていなかった私の身体は、美味しいモノを食べる悦びを知ってしまったんです。鱧の揚げ浸し、鴨団子、にしん旨煮、鮭金山寺焼と続けて食していきます。このあたりはもう記憶がありません。スイッチが入った私は獣のように貪り喰いました。ただひとつ、心の片隅に迷いを抱えながら。そうです。メインデッシュ、黒毛和牛ローストビーフです。 私は黒毛和牛ローストビーフをどのタイミングで食べようか、実はずっと迷っていました。他の美味しいおかずを食べながら、私の心はずっと黒毛和牛ローストビーフのほうを向いてしまっていたんです。だんだんとまわりのおかずもなくなり、今半弁当の終わりが近付いてきます。とうとう黒毛和牛ローストビーフだけが残ってしまいました。もう逃げ場はありません。3切れの黒毛和牛ローストビーフを食べ終えれば、この瞬間は終わってしまう。やっと黒毛和牛ローストビーフが食べられる嬉しさと、このまま食べずにずっととっておきたい寂しさでぐちゃぐちゃになりながら、それでも1歩を踏み出して、下に敷かれていた玉ねぎとともに、まずは1切れ目をいただきます。私はお肉が好きなんです。ローストビーフだって、少なくとも50枚は食べてきたはずです。でも、冷たいはずなのに、温かさすら感じてしまうほど脂がほどよく溶け出し、舌のうえでトロトロとろけ出すローストビーフは初めてです。これが黒毛和牛の力なのでしょうか。気づけば、私の舌と黒毛和牛ローストビーフは一体化していました。ただただ、幸せなひとときでした。あと5枚くらい、黒毛和牛ローストビーフ食べたいな、という気持ちもありますが、黒毛和牛ローストビーフを食べ終え、私と今半弁当のロマンスが終了した今、私はとても満足しています。月曜断食の日に食べるという禁忌を犯した私ですが、悔いは全くございません。私は今半弁当の黒毛和牛ローストビーフに愛されたのですから。

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VICE Japanのインスタグラム(vicejapan) - 10月22日 19時54分


今半弁当、最高でした。冷たい、固い、まずいと勝手に決めつけていたお弁当の概念が覆され、お弁当の余韻に若干ぐったりしつつ、最後に口に運んだローストビーフのスジをくちゃくちゃ噛みながら、今このテキストを書いております。

お弁当のフタを開けまず1口目。1口目がいちばん迷いました。お弁当内のどこを見渡しても、手をつけるスキがないんです。「とりあえず」なんて生半可な気持ちで手を伸ばせる2軍のおかずがないんですよ。悩んだ挙句、お弁当箱の右端にこっそりとかくれていたキノコに手を伸ばしました。キノコなら、高級弁当初心者の私を受け入れてくれるんじゃないか。淡い期待がありました。とんでもない。キノコの旨味は私の脳天にズギュンと突き刺さり、口のなかでジュワっと弾けて消えました。一瞬なにが起きたのかわからず、しばらく呆然としましたが、だんだんと現実に引き戻されました。今半弁当処女の私は、しょっぱなのキノコからイってしまったんです。

このままでは、このお弁当を食べ終えるまで身がもたない。そう感じた私は、慣れ親しんでいるカレに助けを求めました。ライスです。小さい頃から苦楽を共にし、一緒に育ってきた幼馴染のライスくん。カレなら、私を優しく包み込んでくれるのではないか。冗談じゃありません。松茸のスライスと枝豆が乗っかったライスは、もう私の知っているライスくんではありませんでした。口に入れた瞬間、全身を松茸の香りが駆け巡り、一気に鼻の穴から出ていきました。私は鼻の穴まで犯されたのです。ここまできたら、もう失うものはありません。

3口目、ここからはもう迷いはありませんでした。月曜断食で今日1日何も食べていなかった私の身体は、美味しいモノを食べる悦びを知ってしまったんです。鱧の揚げ浸し、鴨団子、にしん旨煮、鮭金山寺焼と続けて食していきます。このあたりはもう記憶がありません。スイッチが入った私は獣のように貪り喰いました。ただひとつ、心の片隅に迷いを抱えながら。そうです。メインデッシュ、黒毛和牛ローストビーフです。

私は黒毛和牛ローストビーフをどのタイミングで食べようか、実はずっと迷っていました。他の美味しいおかずを食べながら、私の心はずっと黒毛和牛ローストビーフのほうを向いてしまっていたんです。だんだんとまわりのおかずもなくなり、今半弁当の終わりが近付いてきます。とうとう黒毛和牛ローストビーフだけが残ってしまいました。もう逃げ場はありません。3切れの黒毛和牛ローストビーフを食べ終えれば、この瞬間は終わってしまう。やっと黒毛和牛ローストビーフが食べられる嬉しさと、このまま食べずにずっととっておきたい寂しさでぐちゃぐちゃになりながら、それでも1歩を踏み出して、下に敷かれていた玉ねぎとともに、まずは1切れ目をいただきます。私はお肉が好きなんです。ローストビーフだって、少なくとも50枚は食べてきたはずです。でも、冷たいはずなのに、温かさすら感じてしまうほど脂がほどよく溶け出し、舌のうえでトロトロとろけ出すローストビーフは初めてです。これが黒毛和牛の力なのでしょうか。気づけば、私の舌と黒毛和牛ローストビーフは一体化していました。ただただ、幸せなひとときでした。あと5枚くらい、黒毛和牛ローストビーフ食べたいな、という気持ちもありますが、黒毛和牛ローストビーフを食べ終え、私と今半弁当のロマンスが終了した今、私はとても満足しています。月曜断食の日に食べるという禁忌を犯した私ですが、悔いは全くございません。私は今半弁当の黒毛和牛ローストビーフに愛されたのですから。


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2018/10/22

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