GYREのギャラリー、Eye of GYREでまたひとつ、面白い展覧会が始まった。 これからの時代を考える上で、ぜひとも見ておいていただきたい展覧会。 その名も「2018年のフランケンシュタイン アイオアートにみる芸術と科学と社会のいま」。 #2018フランケンシュタイン というハッシュタグを勝手につくってツイッターでもつぶやいている。 今、人類が立っている岐路というと、AI技術の発展を前提にした「シンギュラリティ」ばかりが議論にのぼるが、もしかしたら、人類にそれよりもはるかに大きな影響を与えるのは「生命科学」の進化の方かもしれない。生まれ持った性質をすべて詳らかにするDNA分析の技術、ゲノム編集、生物兵器、そしてグーグル創業者らも関わる不老不死技術の開発… 本展覧会は、そうしたバイオ・テクノロジーの発展への警鐘を鳴らしつつ、 生命とは何か、人類とは何者か、そしてそれはをどこへ向かっているのかを問いかけてくる。 展覧会は3部構成で、第1章のテーマは「蘇生」。 開腹され医療器具につながれたユニコーンで幕を開ける。 「蘇生するユニコーン」の作者は平野真美。 非生物的な素材でつくられているというユニコーンだが、常に平野が手を入れてメンテナンスをし続けないと、少しずつ朽ちてリアルさが失われてしまうのだという。作品を蘇生し続けることで、平野自身も自らが生かされているような錯覚に陥るのだという。 同じ第1章には、ファッションデザイナー、アレクサンダー・マックイーンの皮膚を本人のDNAをクローニングしてつくったジャケット「Pure Human」も展示されている(実際にはクローンが間に合わず、豚の皮膚を使っているという)。 また、奥の壁にはゴッホの親族のDNAをつなぎあわせて、切り落とされたゴッホの耳を再生したディムレット・ストレーブの「sugababe」という作品の写真も飾られている。 第2章のテーマは「人新世」。 大量生産による人類の産物が地質年代として現れ始めた現代の社会がテーマで、ここでは今年のAsian Art Awardでも特別賞を受賞した生物の力を借りて作品をつくる注目アーティスト、Aki Inomataの作品が3点出品されている。 1つめはヤドカリに3Dプリンターでつくった透明の殻を与えて作品にした「やどかりに「やど」をわたしてみる」。水槽の中には2つの殻があり、運が良ければ会期中にもヤドカリの引っ越しが見られるかもしれない、という。 2つめは年輪のように刻まれたアサリの成長線を記録した「Lines」。2011年3月11日以前と以後で変わったアサリの成長線を通して環境の変化が知れる作品。 そして3つめ、洋服のハギレをメスのミノムシに与えて服を作らせるという「girl, girl, girl , , , 」。 この作品、初めて見たけれど、結構、ステキ。ホームページでビデオが観れる模様だ: http://www.aki-inomata.com/works/girl_girl_girl/ 第2章、もう1つ面白かったのは本多多映の「EVERYBODY NEEDS A ROCK」は、ハワイの海岸で発見された「プラスティグロメレート」(熱で溶けたプラスチックと溶岩、海砂、貝殻などが混じってできた鉱物)に着想を得て、道端で拾ったプラスチックを溶かし合わせて磨いてつくった人新世時代の新しい鉱物(あるいは未来の化石)。「ANAフェスタ」と呼ばれた飛行場のお土産袋の青い鉱石やシャンパンのコルクを止めるワイヤーが絡んだ石などからできた美しい石を並べた作品となっている。 他にマーク・ダイオンによるタールでコーティングした鳥の彫刻や奇形をテーマにした偽の化石などの作品も飾られている。 第3章「生政治」は、かなりのリアリティと怖さを持った内容になっている。 1つ目の作品、ヘザー・デューイ・ハグボーグの「Stranger Visions」は、道端に落ちていたガムやタバコの吸い殻からDNAを抽出して、その主の顔をリアルなマスクで再現した作品。 そしてBCL(ゲオアグ・トレメルと福原志保のユニット)の作品、「DNA Black List Printer」は、パンデミックを起こせば人類を絶望の淵にすら陥れかねないDNAを印刷するDNAプリンターをイメージしてつくられた作品だ。 欲しいDNAの連鎖を送れば、その通りのDNA連鎖をつくりだしてくれる「DNAプリンター」はまだまだ高価なので、研究所などでは持つことができず、リクエストを送った後、生成物を送り返してもらう方式だという。実はこの中央集権のやり方にはもう1つ理由がある。それは人類に危機を及ぼす「生物兵器」などのDNA連鎖がブラックリストに登録されており、その連鎖を作ろうとする人がいないかを監視する役目だ。 しかし、今は効果なDNAプリンターも、いずれテクノロジーの進歩により個人でもつくれるようになる。 そうなった時、もはやそこには人類を生物兵器の危機から救う監視の目は置きようがない。 本作品は「Sin Nombre」(スペイン語で名無し)という名前のブラックリスト入りのDNA連鎖の印刷を試みるDNAプリンターだ。DNAの構成要素であるAGCT(アデニン、グアニン、ウラシル

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林信行のインスタグラム(nobihaya) - 9月10日 00時42分


GYREのギャラリー、Eye of GYREでまたひとつ、面白い展覧会が始まった。
これからの時代を考える上で、ぜひとも見ておいていただきたい展覧会。
その名も「2018年のフランケンシュタイン アイオアートにみる芸術と科学と社会のいま」。
#2018フランケンシュタイン というハッシュタグを勝手につくってツイッターでもつぶやいている。

今、人類が立っている岐路というと、AI技術の発展を前提にした「シンギュラリティ」ばかりが議論にのぼるが、もしかしたら、人類にそれよりもはるかに大きな影響を与えるのは「生命科学」の進化の方かもしれない。生まれ持った性質をすべて詳らかにするDNA分析の技術、ゲノム編集、生物兵器、そしてグーグル創業者らも関わる不老不死技術の開発…

本展覧会は、そうしたバイオ・テクノロジーの発展への警鐘を鳴らしつつ、
生命とは何か、人類とは何者か、そしてそれはをどこへ向かっているのかを問いかけてくる。

展覧会は3部構成で、第1章のテーマは「蘇生」。 開腹され医療器具につながれたユニコーンで幕を開ける。 「蘇生するユニコーン」の作者は平野真美。
非生物的な素材でつくられているというユニコーンだが、常に平野が手を入れてメンテナンスをし続けないと、少しずつ朽ちてリアルさが失われてしまうのだという。作品を蘇生し続けることで、平野自身も自らが生かされているような錯覚に陥るのだという。

同じ第1章には、ファッションデザイナー、アレクサンダー・マックイーンの皮膚を本人のDNAをクローニングしてつくったジャケット「Pure Human」も展示されている(実際にはクローンが間に合わず、豚の皮膚を使っているという)。 また、奥の壁にはゴッホの親族のDNAをつなぎあわせて、切り落とされたゴッホの耳を再生したディムレット・ストレーブの「sugababe」という作品の写真も飾られている。

第2章のテーマは「人新世」。
大量生産による人類の産物が地質年代として現れ始めた現代の社会がテーマで、ここでは今年のAsian Art Awardでも特別賞を受賞した生物の力を借りて作品をつくる注目アーティスト、Aki Inomataの作品が3点出品されている。

1つめはヤドカリに3Dプリンターでつくった透明の殻を与えて作品にした「やどかりに「やど」をわたしてみる」。水槽の中には2つの殻があり、運が良ければ会期中にもヤドカリの引っ越しが見られるかもしれない、という。
2つめは年輪のように刻まれたアサリの成長線を記録した「Lines」。2011年3月11日以前と以後で変わったアサリの成長線を通して環境の変化が知れる作品。

そして3つめ、洋服のハギレをメスのミノムシに与えて服を作らせるという「girl, girl, girl , , , 」。
この作品、初めて見たけれど、結構、ステキ。ホームページでビデオが観れる模様だ:
http://www.aki-inomata.com/works/girl_girl_girl/

第2章、もう1つ面白かったのは本多多映の「EVERYBODY NEEDS A ROCK」は、ハワイの海岸で発見された「プラスティグロメレート」(熱で溶けたプラスチックと溶岩、海砂、貝殻などが混じってできた鉱物)に着想を得て、道端で拾ったプラスチックを溶かし合わせて磨いてつくった人新世時代の新しい鉱物(あるいは未来の化石)。「ANAフェスタ」と呼ばれた飛行場のお土産袋の青い鉱石やシャンパンのコルクを止めるワイヤーが絡んだ石などからできた美しい石を並べた作品となっている。

他にマーク・ダイオンによるタールでコーティングした鳥の彫刻や奇形をテーマにした偽の化石などの作品も飾られている。

第3章「生政治」は、かなりのリアリティと怖さを持った内容になっている。
1つ目の作品、ヘザー・デューイ・ハグボーグの「Stranger Visions」は、道端に落ちていたガムやタバコの吸い殻からDNAを抽出して、その主の顔をリアルなマスクで再現した作品。

そしてBCL(ゲオアグ・トレメルと福原志保のユニット)の作品、「DNA Black List Printer」は、パンデミックを起こせば人類を絶望の淵にすら陥れかねないDNAを印刷するDNAプリンターをイメージしてつくられた作品だ。
欲しいDNAの連鎖を送れば、その通りのDNA連鎖をつくりだしてくれる「DNAプリンター」はまだまだ高価なので、研究所などでは持つことができず、リクエストを送った後、生成物を送り返してもらう方式だという。実はこの中央集権のやり方にはもう1つ理由がある。それは人類に危機を及ぼす「生物兵器」などのDNA連鎖がブラックリストに登録されており、その連鎖を作ろうとする人がいないかを監視する役目だ。

しかし、今は効果なDNAプリンターも、いずれテクノロジーの進歩により個人でもつくれるようになる。
そうなった時、もはやそこには人類を生物兵器の危機から救う監視の目は置きようがない。
本作品は「Sin Nombre」(スペイン語で名無し)という名前のブラックリスト入りのDNA連鎖の印刷を試みるDNAプリンターだ。DNAの構成要素であるAGCT(アデニン、グアニン、ウラシル


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2018/9/10

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