『おからハンバーグ』「本日はおからハンバーグです」と私、「本日も美味しそうですね」とあなた、日常の中にある言葉すら今の二人にはもう必要がないらしい。私達に必要なものはなんだった、足りないものって一体なんだったんだろうね、見慣れた景色、変わらない景色私は一人おからハンバーグ定食を食べていた。深夜24時おからハンバーグ、ご飯は白米、漬け物、おかずが少し。音の聴こえない映画を壁に映したスクリーン眺めながらいつものように黙って食べている。どんな声を出しているか適当に想像しながら映画を観る、だいたい映画はいつも同じで可もなく不可もなくやや万人ウケのもの見馴れた景色のような映画はもはや映画ではなくなっていた。正直言うと特別美味しいわけでもなく、だからといって不味いわけでもないこの味とこの時間は極めて相性が良かった。何も考えなくていられることは、私にとって好都合だった。この場所にこれといった思い出があるわけでもない。とはいえ思い出は鮮明じゃない方がいいとも思う。この定食とこの場所に思い出がなくて本当に良かった思い浮かぶのはあなたが微笑んだ時くらいのことででもその微笑みだけが私を弱くさせ続けた。あなたのことは早く忘れた方がいいと数日経った今でも思っているし、あなたもそう思っていてほしい。なんでもないこのおからハンバーグの写真をあなたに送りそうになって、私は私に情けない気持ちにしかならなかった。息を止めた映画をただただ眺め、私達はどこから何が間違っていたのか考えた。今日はいつもより食べ終わるのに時間がかかる。どうせ帰ったってあなたが残した空気が家のそこら中に付着して結局私を１人にさせないのだから。もう考える理由さえ見つからない現実が日常に変わっていくのを真正面で感じている。あなたがいないことにいつのまにか慣れてわたしはいつか誰かの事を好きになって、あなたが言ってくれた言葉なんて忘れて誰かの言葉を心から愛しているのだろう。手を繋いで目を閉じてしまうのだろう。なんなんだよ、ばかやろう。どうでもいいんだ。私達のことを考えることだけがあなたへの精一杯の最後の愛だった。おからハンバーグを食べながら泣く女なんてあまりにもばかみたいで今日のことを誰にも言うつもりはない。この定食は特別美味しいわけではないけれど結局この定食とこの日常みたいな景色に今は助けられている。大好きだ、ありがとう。めんどくさいよさようなら。おからハンバーグ @watashinokotobatachi #わたしのことばたち #一曲分の話

loveli_officialさん(@loveli_official)が投稿した動画 - 2018/03/11 22:37:26